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エリクソンの発達理論を解説: 幼児期から老年期までの心理社会的発達段階とその特徴、アイデンティティと自己実現の探求に焦点を当てた分析。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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幼児期初期は自立性確立ということで、自分でいろんなことをやってみたいと主張する一方で、うまくできずに失敗してしまうこともあります。失敗したことが恥ずかしいと感じることや、自分はできないかもしれないという自己疑念が生じることがあります。幼児期の後半は「罪悪感」という時期で、なぜならどうしてといった質問を盛んにすることからも知られています。この時期は、積極的に世界に関わろうとする一方で、何か悪いことをしてしまったかもしれないという罪悪感が芽生えることがあり、その両極の中で揺れ動きます。学童期は「勤勉性対劣等感」として知られ、学校で新しい知識を獲得し、一生懸命努力しますが、できないことが明らかになると、それが劣等感につながることがあります。

エリクソンが特に重視したのはこの青年期です。青年期は、「アイデンティティ対アイデンティティの混乱」として記述されますが、アイデンティティとは自分が何者なのか、という自己の理解です。青年期は、自分が何者なのかを考える時期でありながら、何者であるかが分からなくなったり、何をすべきかがわからなくなることがあります。この時期、過去にやり残した課題をクリアし、未来の課題に取り組むこともあります。

成人期では、自分が何者であるかを確立した人は、真の意味で他人との深い関係を築くことができます。それは、人生のパートナーや長年の友人との親密な関係を含みます。しかし、自分と全く同じ人間はいないため、孤独感を強く感じることもあります。成人期は「生殖性対停滞」としても知られており、これは親としてだけでなく、教師や人生の先輩として、後進を育てる役割も含む広い概念です。適切に引き継げないとき、人生が停滞しているように感じることがあります。

老年期では、人生の最終段階を迎え、残された時間が少なくなる中で、人生が失敗だったかもしれないと感じることがあります。しかし、個人の生涯が終わるとしても、その人生が家族や人類に何らかの意味を与えると考えると、統合感につながります。これら全てを通じて、エリクソンは人生全般にわたる発達理論を構築しました。エリクソンだけでなく、フロイトやピアジェの理論も踏まえつつ、人の発達を理解することができます。

 

 

 

フロイトとピアジェの発達理論に加え、エリクソンの心理社会的発達理論が大人の生涯発達を8段階で詳述し、個人成長のダイナミクスを解説しています。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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フロイトもピアジェも、発達のそれぞれの時期に特徴的な状態があることを想定しており、それを「発達段階」と呼んでいます。ただし、フロイトであれピアジェであれ、それらの段階が大人になるという状態で、一つの最終的な状態として捉えられており、大人が一つのゴールとされています。しかし、人の発達は大人になることで完了するわけではありません。

成人以降の発達がどのようなものかを考える必要があります。成人期以降の発達も含め、それぞれの時期の発達課題を考えた人としてハヴィガーストがいます。ハヴィガーストの発達課題論は、1930年頃のアメリカでの理想的な市民の姿を想定したもので、人の発達を全体的に捉える、または人の発達として共通するものを捉えるというものではないという点で異なります。

このように考えると、人の生涯にわたる発達を考えたのがエリクソンです。エリクソンは、人の心理社会的発達に関する理論として知られています。エリクソンは、フロイトの性的発達段階論を基にしながらも、人が経験するさまざまな人間関係や社会との関わりを中心に、人の生涯を8つの段階に分けて、それぞれの発達時期に2つの状態があると考え、その理論を構築しました。

これらの8つの段階は乳児期に始まり、老年期までを含みます。フロイトやピアジェが完成段階と見なしていた青年期以降の発達も考慮されています。エリクソンの理論では、それぞれの時期に特有の2つの極端な状態が存在し、その中で葛藤を経験し、そうして人の発達が進むとされています。たとえば、乳児期の課題としては、基本的信頼と基本的不信があり、人に対する基本的な信頼感を築いていく時期と考えられます。

乳児期に、例えば身近なお母さんが、自分に対して不適切なことをすることなく、自分に求めているものに応じてくれることから、人を信じる力を獲得していきます。ただし、人を信じるとは、単に無条件で信じるということではなく、時には裏切られることもあります。お腹が空いてミルクを飲みたくて泣いているのに、時々お母さんが応じてくれないこともあります。それでも基本的には信じてよいと理解する中で、人に対する基本的な信頼が形成されていきます。

 

 

 

ピアジェの発達段階理論を掘り下げ、感覚運動期から形式的操作期までの子供の認知発達プロセスを解説。認知心理学の基本を紹介。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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もう1人の発達理論家として代表的なのがジャン・ピアジェです。

ピアジェはスイスのニューシャテルで生まれ、ジュネーブのルソー研究所で子供の知能あるいは思考の発達について研究をしてきました。ピアジェは、人が環境との関わりから知識を構築し、既に持っている認知構造の中に新しい情報を同化、取り入れることで理解を深めていくと考えました。これを発生的認識論と呼んでいます。認知発達に関するピアジェの理論は、段階論として知られており、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期という4つの段階で考えられています。これらの段階は、人の認識世界が具体的なものから抽象的なものへと移行していく過程を示しています。

感覚運動期は、生まれてから最初の2年間を指します。ピアジェには3人の子供がおり、ジャクリーヌ、ルシエン、ローランの観察から「知能の誕生」という本を書きました。子供たちに様々な実験をしてみて、その反応を見て、これを本にまとめました。乳児期の子供は、見たり、聞いたり、触ったりする感覚や、掴んだり、落としたり、叩いたり、噛んだりする運動を通じて外の世界を知ります。

ピアジェは、外的な活動を通じて外の世界を知る時期が感覚運動期であると考えました。この期間中、子供は頭の中に物を思い浮かべることができず、例えば物が隠された場合、それが存在しないかのように振る舞います。しかし、物との関係を繰り返し経験することで、物の恒常性を理解するようになります。つまり、見えない時もその物が存在していることを学びます。

そして、見えないものの存在を心の中で思い描くことができるようになるのは、イメージや表象が形成されるためです。この能力が成立すると、次の段階である前操作期へと繋がります。前操作期は幼児期であり、この時期には心の中で外界の事象を処理する活動、つまり思考が発展します。子供は遅れ模倣や象徴遊びを通じて、目の前にないものでも心の中に再現できるようになります。

前操作期には言語が発達し、リンゴと言われた時にその物体が見えなくても、リンゴを思い浮かべることができます。この時期は、見かけに惑わされやすく、他人の視点を理解することが難しいため、自己中心的な考え方が支配的です。

次に、6歳から11歳の具体的操作期では、子供は具体的に理解できるものに対して論理的に考えることができるようになります。この時期には物の保存概念が成立し、形が変わってもその本質が変わらないことを理解します。この理解に基づき、異なる形の容器に同じ量の液体があっても、その量が変わっていないと理解することができます。

そして、形式的操作期では、具体的な現実から離れて抽象的に考え、仮説を立てて推論することができるようになります。この段階で、子供たちは多様な視点から物事を考える能力を獲得し、自己中心性から脱却します。

 

 

 

フロイトとピアジェによる心理性的発達段階説と認知発達理論を解説。性的エネルギー、エディプスコンプレックス、社会習慣獲得のプロセスを掘り下げ、発達心理学の基礎を紹介。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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人の発達的変化をどのように捉えるかは、昔から様々な形で行われてきました。1900年以降の発達心理学における主な理論家として、パーソナリティーの発達を捉えたフロイトと認知発達のピアジェが挙げられます。これがフロイトについてですが、1856年に生まれ1939年に亡くなりました。フロイトはリビドという性的なエネルギーに基づく発達という精神力動説を唱え、心理性的発達段階説とも呼ばれています。フロイトの発達段階には、口唇期、肛門期、ファリック期(または男根期)、潜伏期、生殖器期という、一見奇妙に思われるかもしれない名前がついています。

これら5つの段階を通じて人が発達するとフロイトは考えました。これらの期間の意味は、人が外の世界との接触点で葛藤を起こす場所であるということを示しています。生まれて間もない時期から、子供は母親の乳房を吸うことや、生えてきた歯を使って噛むことなどの口唇活動を通じて快楽を得ようとします。これが口唇期です。1歳から3歳ごろになるとトイレトレーニングが始まり、排泄に快感を感じると同時に、親からの指導形式での排泄コントロールが始まり、この活動を通じて親との葛藤を経験することになります。

次のファリック期は、幼児期に当たります。これはギリシャ神話のオイディプス王の悲劇から名付けられました。男の子は母親に、女の子は父親に性的関心を持ち、逆の親を競争相手として見るようになります。しかし、この理解は性的な意味合いではなく、母親だけが全てであった子供の世界に父親が加わることで新しい世界が見えてくる、と今日的には解釈されます。

その後の潜伏期は、基本的に幼年期から思春期がそれに当たります。性的な葛藤から精神的エネルギーを抑圧し、性的欲求が表面に出にくくなり、新しい社会習慣を身につけたり、知識を習得する時期です。最後に成熟期は、思春期以降で、心理的に成熟した段階です。

 

 

 

人の発達における生涯発達、獲得と喪失、遺伝と環境の役割を探究し、バルテスの理論を基にダイナミックな発達プロセスを解説。#人の発達 #生涯発達 #遺伝と環境 #発達心理学(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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今回は第1回目として、「人の発達とは」についてお話しします。本日取り上げるテーマは以下の3つです。まず、「発達とは何か」ということについて、発達的変化をどのように見るかについて話します。

第二に、「獲得と喪失」という視点で、人の発達は成長と衰退が混在するダイナミックなシステムとして捉えられます。エイジングに伴い、できなくなることもある一方で、補償的あるいは代替的なメカニズムが発達すると考えられます。例えば、年を取ると忘れやすくなり新しいことを覚えにくくなるものの、経験から得た知恵を活用して忘れない工夫をするなどが可能です。このような発達の両義性に焦点を当てたのは、1980年代にPaul Baltesによってなされた研究で、生涯発達の視点に大きな影響を与えました。

第三に、「遺伝と環境」という視点では、遺伝や環境が発達にどのような影響を与えるかが考察されます。遺伝と環境の影響は、発達の時期によって変わります。例えば、発達の初期には生物学的な影響が強く、高齢になると再び年齢に伴う変化の影響を受けやすくなります。一方、中期には、生きている時代や文化の影響を大きく受けるようになります。現代では、電子機器の普及によって私たちの生活に大きな変化がもたらされています。個々人の非標準的な影響もあり、例えば綺麗好きな人は年齢と共にその傾向が強まることがあります。

人の発達は、時間軸に沿った変化と各発達領域での変化の2つの方向から捉えることができます。生涯にわたる発達は、幼年期から老年期までの時間軸の変化と、各時期に見られる特有の発達の領域の変化からなります。

 

 

 

「人の発達とは」を探る講演、発達心理学と生涯発達理論を基に、発達的変化と人生段階を熊野巡礼路絵から解説。#人の発達 #発達心理学 #生涯発達理論(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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今回は第1回目として、「人の発達とは何か」というテーマでお話しします。本日取り上げるテーマは以下の3つです。まず、発達とは何か、ということについて、発達的変化をどのように捉えるかをお話しします。二つ目は、生涯発達について、様々な理論家が発達をどのように捉えるかについての理論を構築していますので、その理論について整理したいと思います。三つ目は、発達を捉える方法について、発達心理学の中で、発達をどのように捉えていくのか、その方法についてお話ししたいと思います。

人が発達するとはどういうことでしょうか。少なくとも私たちは、人が年齢に伴って何らかの変化を遂げていくと考えています。その変化はどのようなものでしょうか。この絵をご覧ください。

これは、熊野の巡礼路を歩く女性宗教者、クノイチが持ち歩き、説明を加えたものとされています。室町時代から江戸時代にかけてのものとされ、絵には人生の段階が描かれています。右下には、子供の誕生から始まり、徐々に成長し、大人になり、老後を迎え、最終的には死に至るプロセスが描かれています。

この絵の坂は人生の象徴であり、周囲の木々は時間の変化を示しています。人が亡くなった後、その魂がどのような運命をたどるか、天に昇るか、または地獄へ落ちるかは、生前の行いによって決まるというメッセージが込められています。これは、生きている間にどのように生きるべきか、どのような心構えでいるべきかを説くものです。死後の世界は宗教の領域に属しますが、生きている間の人の変化を階段の上り下りに例えるこのイメージは、多くの地域文化で見られる、私たちの共通のイメージと言えるでしょう。

 

 

 

 

化学反応の基本を探究し、分子の酸素親和性の実験を通じて、反応の方向性とエネルギー変化を理解。#化学反応 #酸素親和性 #たたら製鉄 #実験(分子の変化からみた世界第1回)#放送大学講義録

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はい。残りの時間で、化学反応を扱うための基本的なアイディアを紹介したいと思います。次の内容をご覧ください。

基本的な考え方は、特定のタイプの反応を分子内での全体的なやり取りと見なすことです。このように考えると、反応が起こるかどうかは、そのやり取りによるエネルギーの変化で決まります。

このエネルギー変化は、どの反応経路を好むかということに関係します。

ラヴォアジエは、燃焼と還元を酸素原子の化合と脱離として理解できると示しました。この理解に基づき、酸素原子に対する炭素と鉄の親和性を比較することで、反応の方向性が決まります。この反応は、鉄から酸化鉄(Fe3O4)が生成する反応と、炭素から二酸化炭素が生成する反応の組み合わせで表現できます。

これを理解すると、酸素が二酸化炭素から提供される場合、二酸化炭素の生成反応を逆にして酸化鉄の生成反応に加えることで、全体の反応式が導き出されます。これにより、酸素との結びつきが鉄の方が強い場合は反応が右側に進み、炭素の方が強い場合は左側に進みます。

実際には、この反応は高温で左側に進み、鉄を製造する過程で利用されます。これは、日本のたたら製鉄の原理にも関連しています。

さらに、酸素原子との親和性に関する実験を行います。酸化アルミニウムと鉄の粉、そして酸化鉄とアルミの粉をそれぞれ混ぜ、火をつけてどちらの反応が起きるかを観察します。

実験では、酸化鉄とアルミの混合物が反応し、これはアルミが酸素と強く結びつくことを示します。この実験は、酸素との結合の強さを視覚的に確認する良い例となります。

この実験を通じて、化学反応の理解が深まり、実際の反応を見ることの興奮を感じることができます。