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現代型いじめの深層:原因と対策は?(司法・犯罪心理学第4回その9)#放送大学講義録

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なぜ、このような現代型いじめが起きるのでしょうか。
印刷教材の図「子供を取り巻くシステム」をご覧ください。
このように、子供同士が傷つけ合ういじめ現象は、現代の子どもたちが置かれている社会、学校、家族からの様々なストレスに対する防衛反応だと捉えることができます。
すなわち、子供集団システムに、家族、学校、社会などの上位システムから過度なストレスなどの加害が及ぼされていることに対する子供たちの防衛だということです。
そうすると、非行、若年層の問題、いじめなど昨今の子供たちの問題を、印刷教材の図「問題が生まれる少年の防衛反応の形」などのように理解することができます。
すなわち、ある子供は、加害を及ぼす家族、学校、社会への反撃として攻撃行動を起こします。
それが非行などに現れます。
ある子供は、自分の殻に閉じこもることで自分を守ります。
それが若年層の問題などに現れます。
そして、ある子供同士はお互いを傷つけ合うという集団内の自衛行為を起こします。
これが現代型いじめです。
すると、いじめを加害者から被害者への直線的な関係だけで捉えて、加害者を非難したり排除したりすることは、子ども集団における問題をさらに根深くすることにもなりかねません。
したがって、子供集団の歪みを修正するという観点から、いじめの被害者を守ることはもちろんのこと、それと同時にいじめの加害者のケアも行うことが必要だと言えます。
このような現代型いじめによる事件が後を絶たず、それを防ぐためにいじめ防止法が制定されたのですから、私たちはその法律に従って対処することが求められることになります。

誰もが加害者に?現代型いじめの実態(司法・犯罪心理学第4回その8)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 

現代型いじめの特徴です。
現代型いじめは、いじめの加害、被害、防止、仲裁が入れ替わることが大きな特徴です。
2013年の国立教育政策研究所の調査によれば、小学校4年生から中学校3年生までの6年間に、およそ9割の小中学生がいじめの被害と加害の経験があるということです。
つまり、一部の子供だけが被害を受けているわけではないということです。
2012年に高校生756人を対象にしたいじめ調査では、いじめられたことがあるからいじめた、いじめられないためにいじめたといういじめ被害に関することをいじめ加害の原因にした子供が2割以上いました。
また、2014年に155人の大学生を対象にした小中高校時代のいじめ体験の実態調査では、いじめの加害、被害、防止、仲裁の複数の経験をしているものがおよそ3割いました。
このような調査結果からみると、いじめの加害者と被害者が固定するいじめを古典的いじめとすれば、現代型いじめは誰もがいじめの加害者、被害者になりうることが特徴だと言えます。
第3回の現代の非行の特徴で述べましたように、子供同士が傷つけ合うという子供集団の関係の歪みを顕著に示していると思われます。

いじめ=犯罪?知っておきたい対応策(司法・犯罪心理学第4回その7)#放送大学講義録

いじめが犯罪になりうることは強調しておきたい。

 

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いじめの具体例です。
いじめ防止法の規定に基づいて、文部科学省は、いじめの具体的な対応として次の例を挙げています。
冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる。
仲間外れ、集団による無視をされる。
軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり蹴られたりする。
ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする。
金品をたかられる。
金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする。
嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする。パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされるなどです。
なお、以上の行為には、犯罪として取り扱われる行為や生命、身体等に重大な被害が生じるような場合もあるので、教育的な配慮の上で早期に警察と連携した対応が必要であると付記しています。
例えば、叩く、蹴る、殴るなどは暴行罪、その暴行で相手が怪我をすれば傷害罪、金品を盗めば窃盗罪、脅かして金品を取れば恐喝罪、ネットやLINEで相手を誹謗中傷すれば名誉毀損罪、既存の相手のものを壊したり捨てたりすれば器物損壊罪、相手の嫌がることを強要すれば強要罪になります。
このように見ると、いじめ行為のほとんどが犯罪になりうる悪質な行為であることがわかります。

いじめの新定義:塾やネットも対象(司法・犯罪心理学第4回その6)#放送大学講義録

人的関係が前提になるということだろうか。

 

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まず、いじめを児童または生徒としての人的関係にある他の児童等の行為に限定して、同じ学校に在籍している場合に限らず、塾やスポーツクラブなどでつながりがある場合も含むということです。
次に、心理的な影響を与える行為とは、無視、仲間外れ、陰口、差別などであり、インターネットの掲示板などで誹謗中傷やLINEのグループから外すなどの行為も含みます。
物理的な影響を与える行為とは、暴力の他に、被害者が嫌がることを無理にやらせたり、被害者の所有物を壊したり隠したりすることなどです。
いじめの判断基準は、被害者が心身の苦痛を感じているかどうかという被害者の立場で判断するということです。
からかいやふざけ合いも、被害者が苦痛を感じていればいじめに該当する場合があるからです。

いじめ防止法解説:何が心身の苦痛?(司法・犯罪心理学第4回その5)#放送大学講義録

定義は重要である。

 

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さらに、いじめ防止法第2条は、いじめを次のように定義しています。
3つに区切って言います。
いじめとは、まず、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等、当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う。
次に、心理的または物理的な影響を与える行為で、インターネットを通じて行われるものを含む。
最後に、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものを言う。
順番に説明します。

いじめ防止法解説:責務と教育の権利(司法・犯罪心理学第4回その4)#放送大学講義録

保護者に対して責務を課しているのもポイント。

 

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いじめ防止対策推進法について説明します。
いじめ防止対策推進法(以下、いじめ防止法と言います)は、いじめの防止等のための基本理念を明らかにしました。
まず、国や地方公共団体、学校等は、いじめ防止法に基づいて方針の策定を行わなければなりません。
さらに、保護者に対しても、いじめ防止のために児童等の規範意識を養うことなどを責務としました。
いじめ防止法第1条の冒頭で、次のように明示しています。
いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な危険を生じさせる恐れがあるということです。
このことを明示した意義はとても重要です。

スマホ&ネットが激化させる現代いじめ(司法・犯罪心理学第4回その3)#放送大学講義録

ネットで人間関係から逃げられなくなったようには感じる。

 

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2000年(平成12年)以降の携帯ネット、スマホの普及は、他者と直接向き合って体感できる人の温もりや息遣い、感情という生身の人間関係を失わせ、いじめが大きく変質しました。
ネットを媒体にしたいじめは、相手と向き合わず、匿名のまま相手を攻撃することを可能にしました。
誰もがいじめの加害者、被害者になるという現代型いじめに移行したのです。
ネットやスマホによるいじめは、被害者の痛みが伝わりません。
表面化しにくいので、初期対応も困難になります。
さらに、いじめ攻撃における事実と他者へのコントロールが利かず、エスカレートします。
その結果、いじめによる自殺や他殺にも繋がりかねません。
そのような現代型いじめを反映して、文部科学省は2007年(平成19年)にいじめの定義をさらに変更して、いじめか否かを判断する際の「継続的に」と「深刻な」という要件を取り消して、いじめを広く捉えるようにしたのです。
そして、2011年(平成23年)の大津いじめ自殺事件などがきっかけとなり、2013年(平成25年)にいじめに関する初めての法律であるいじめ防止対策推進法が制定されたのです。