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物理学と数学の関係をわかりやすく解説(初歩からの物理第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

ええと、ここにはまだ数式は出てきていませんね。

そうですね。見たところ、6つの原理がそれぞれ独立している印象ですが、やはり心配なのは数式がたくさん出てくることや、その取り扱いについてです。その点はどうなのでしょうか?

そうですね。実は、ここに出てきている原理というのは、すべて数式で表すことができます。それについては、この科目の中で徐々に扱っていくことになります。ただ、物理学というのは、結局人間が自然と対話していく学問です。相手が自然ですね。これが人文科学と異なる点です。人文科学は相手が人間ですが、物理学は自然を相手にします。

自然というのは、言葉で直接答えてくれるわけではありません。「なぜそんな動きをするの?」と尋ねても、自然は答えてくれません。そこで、自然の振る舞いを読み解くために、私たちは原理を使い、その原理をもとに自然と対話しなければならないのです。その対話に使う言語が数学なのです。これは、気持ちを伝えるのに言葉を使うのと同じことですね。つまり、徐々に数学を使っていくことになるわけです。

ガリレオやニュートンが確立した近代科学の方法においても、数学は基本的な言語となっています。ただし、いきなり高度な数学が必要になるわけではありませんので、その点はご安心ください。

 

 

 

相対性理論から量子力学までの基本原理(初歩からの物理第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

さて、次にこちらの話題に移りますが、これは「時間と空間の捉え方」に関係します。これは、いわゆる有名なアインシュタインの相対性理論に関連する内容です。ここでは光の速さが重要な要素として絡んできます。私たちが物体の長さや時間を測るとはどういうことかというと、実は光を使ってそれらを観測しているのです。このように、観測者と観測される対象の関係性が出てくるのが相対性原理であり、そこに光の速さが関わってくるのです。これも重要な物理学の原理の1つです。

次に、この図ですが、磁石の周りに磁力線が描かれています。これは、磁石の周囲に砂鉄を撒くと、磁力線の様子が視覚化されるという実験でよく見たことがあるかもしれません。磁石があると、その周囲には磁界(磁力が作用する領域)が形成されます。磁石をただ持っているだけでは、周囲の空間に何も変化がないように見えるかもしれませんが、実際には周囲に磁力線が存在し、磁力が働いています。これは「場」という概念で説明され、例えば、私たちも質量を持っているので、周囲には重力場が形成されていると言えます。この「場の概念」も、物理学の重要な原理の1つです。

そして、6つ目の原理は「量子」の考え方です。量子とは、私たちが直接見ることも触ることもできない非常に小さな存在、つまり原子や分子、電子や原子核などです。これらは10億分の1メートル以下のサイズで、物質世界を構成しています。量子はとして伝わり、干渉し、粒子として観測されるという不思議な性質を持っています。この量子の振る舞いに関する原理も非常に重要です。

以上、ここで紹介した6つの物理学の原理を理解すれば、物理学の大枠が見えてくるようになるでしょう。

 

 

 

力学と熱力学の基本原理を解説(初歩からの物理第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

さて、早速ですが、その「6つの原理」とはどのようなものなのか、ここで簡単にご紹介したいと思います。詳細には立ち入りませんが、ここに6つの図を描いています。まず、1つ目は「力が働くと加速度が発生する」という、これはいわゆる力学の基本原理ですね。

次に、この図です。容器の中に気体が閉じ込められています。今日の私たちは、空気が窒素と酸素の集まりであることを知っています。つまり、空気は原子という小さな粒子の集まりです。

この図では、気体を粒子の集まりとして描いています。この大量の粒子、つまり原子が集まって気体を構成しています。そして今、これをぎゅっと押し込んでいる様子が描かれています。このように「押し込む」という行為は仕事をすることを意味します。

さらに、例えばこの気体をバーナーで加熱する、つまりを加えることもできます。仕事も熱も、どちらもエネルギーの一種です。気体にエネルギーを与える方法には、仕事をするか熱を加えるかの2つがあります。これを「熱力学第一法則」と呼び、非常に重要な原理の1つです。

続いて、こちらには「エントロピー」と書かれていますが、自然界には自発的に進行するプロセスがたくさんありますよね。例えば、部屋の右側が空いていて、左側が混雑している状態で、真ん中に穴を開けると、混雑している方から空いている方へ物質が移動していきますよね。そして、この逆の現象、つまり一度広がった物質が再び元の場所に集まるという現象は起きません。

このように自発的に進行する現象を支配するのが、エントロピーという考え方です。閉ざされたシステムの内部では、エントロピーが増える方向に変化が進みます。物理の言葉で言えば、エントロピーが増えることで乱雑さが増し、システムがより多くの可能性を求めて変化していくという傾向を示します。これが「熱力学第二法則」に関係している現象です。

 

 

「初歩からの物理」の魅力(初歩からの物理第1回)#放送大学講義録

今日はイントロ(の講義)のイントロ。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

科目名に「初歩からの」と付いていますが、「初歩」と言ってもどの程度の初歩なのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。その点についてはいかがでしょうか。

はい。物理に興味はあるけれど、体系的に学んだことがない方を対象にしています。例えば、高校で物理を学んだことがない方でも、気軽に参加できるように設計しています。

そうですね。ですから、「これくらい知ってますよね」というような言い方はしませんので、ご心配なく。この科目は、放送大学が提供する物理科目の中でも最も入門的な内容です。大切なのは、自然現象の仕組みを理解したいという好奇心です。これが一番重要です。ぜひ、楽しみながら進めていただければと思います。

私もその好奇心を持って楽しみにしていますが、物理といえば数式や法則を使いこなすのが難しいというイメージがあります。そういった内容も含まれているのでしょうか。

その通りです。数式や公式を使ってガリガリ計算していくというイメージが強いですよね。「物理って、数学を使うんですね」と言われることが多いです。私も実は文系なんですけど(笑)。でも、実は物理学というのは、少数の基本原理から豊かな自然現象を説明しようとする学問なんです。

つまり、覚えるべき基本原理は本当に少ないんです。この科目では、その点を強調していきますので、安心してください。

基本原理が少ないということですが、具体的にはどれくらいの数なのでしょうか。

そうですね。数え方にもよりますが、6つくらいです。

6つですか。

そうです。

思ったより少ないですね。それなら私にもできそうな気がしてきました。

その通りです。ですから、安心して進めてください。

 

 

 

自己決定学習と学習格差への対応(成人の発達と学習第8回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

1つ言えることは、今後の日本社会では、情報化、都市化、高学歴化が進展していく中で、自己決定学習ができる人が増えていくということです。これらの3つの社会的要因は、自己決定学習にとって追い風となるでしょう。しかし、その光の部分だけでなく、影の部分にも目を向ける必要があります。

学習の機会に恵まれなかった人々にとって、自己決定学習を行うことはハードルが高いものとなります。現代の知識基盤社会は、知識を中心とした社会ですから、知識を持つ人と持たない人との間で格差が拡大していく社会でもあります。

そうですね。成人になってからの学習は非常に重要ですが、その決定を個人に委ねることで、知識や技能の相対的な格差が学習を通じてさらに広がっているように感じます。学習機会にアクセスできない、いわゆる「学習弱者」に対しては、生きる力を与え、学習意欲を喚起し、情報提供や動機づけを行うなど、社会教育や生涯学習政策の延長線上に、学習支援の仕組みを整備することが今後ますます求められていると感じます。現代の「知識社会」では、知識が道具であり資本です。このような社会で生き抜くためには、学習は必須であり、それが収入に直結することもあります。そのため、学習機会から取り残された人々は、社会福祉的な支援の対象とも言えるのではないでしょうか。

もし、自己決定学習が社会が提供する学習機会を享受する前提条件であるならば、そこに至らない人々への学習支援を体系化することが、社会的に求められていると感じます。赤尾先生、いかがでしょうか。

そうですね。まさに、グローバル規模で新自由主義的な経済が進展する中で、自己責任が強調される文脈の中に、自己決定学習が絡め取られているという問題が生じています。自己決定学習ができる人とできない人との格差を考えると、今後ますます学習支援が社会的に必要とされるでしょう。

アメリカの成人教育の教科書には「学習を計画することは人生を設計することと同じである」と書かれています。1人1人が生を受け、人生をより良く全うするために、すべての人が学習機会に巡り合えるようにするためには、生涯学習の環境整備とともに、行政の働きかけが今もなお必要であると感じますが、いかがでしょうか。

私もそう思います。ただし、ここには非常に難しい問題が内在しています。それは、行政がどの程度、個人が自己決定学習者になれるよう関わるべきか、また関わって良いのかという根本的な問いに直面するからです。

つまり、行政がすべての人々に自己決定学習を強制できるのか、という問題です。

そうですね。自己決定学習が個人の判断に委ねられている以上、個人の意思に行政が介入することは適切ではないのではないかという問いが残ることでしょう。この点が、生涯学習行政が抱える根本的なジレンマと言えるかもしれません。今回は、成人学習における重要な概念の1つである自己決定学習について取り上げました。赤尾先生、ありがとうございました。

 

 

 

GROWモデルと生涯学習の支援策(成人の発達と学習第8回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

そうですね。社会人になってからの学習は、個人の判断や決定によって行われます。生涯学習の基盤が整備され、自由な学習機会が提供されていても、その情報を入手し、学習を計画し、実行できる人ばかりではありません。学校や大学、企業といった組織を離れた後の学習機会は、個人の学習成熟度や自律度によって左右されるのです。

これまでの生涯学習施策は、GROWモデルが示す第4段階、すなわち自分で学習を計画し、実行し、評価できる自己決定的な学習者を前提にして考えられてきたように思います。しかし、そのような段階に達していない、依存的な学習者に対する学習支援のあり方についても考えていく必要があります。それは、従来の講義形式やドリル学習なども含めた多様な学習方法を取り入れることを意味します。

GROWモデルでも、自己決定学習は状況に応じたものであり、教師の役割は学習者の状況に合わせて教えるスタイルを調整することだと述べています。

確かにそうですね。実際、このように学習機会を自ら積極的に活用できる層とは別に、学習の場に参加できない、あるいは参加しにくい層が存在することにも注意が必要です。成人になってからの学習は個人の自由に任されるものであり、強制できるものではありません。しかし、GROWモデルが示すように、学習成熟度や自律性の低い人々には学習支援が必要とされることもあるでしょう。

雇用を確保し維持する必要に迫られ、新たな学習が必要であっても、情報を得る手段がなく、日々の生活に追われて学習の場から取り残されている人もいるのではないかと思われます。

学習は人生に対する前向きな働きかけであると言われますが、その働きかけができない状況や環境にいる人々は、私たちの目に見えないところで多く存在しているのかもしれませんね。

 

 

 

GROWモデルと自己決定学習の支援(成人の発達と学習第8回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

このように、学習支援によって成人を自己決定学習へと導くことができるというわけですが、赤尾先生、いかがでしょうか。

そうですね。人間は何もないところから自然に、かつ自発的に、1人で自己決定学習者(セルフディレクテッド・ラーナー)になれるわけではありません。そこには当然、学習支援、すなわち教育が先行しなければならないのです。小学校や中学校の段階から、学び方を学ぶ(ラーニング・ハウ・トゥー・ラーン)といった授業が展開される必要がありますね。もちろん、先生方による知識の提供は必要ですが、児童・生徒が身につけた知識を活用して問題に取り組む時間もどうしても必要です。現在流行しているアクティブ・ラーニングは、知識の受信だけでなく、その加工や発信を目指している点で、自己決定学習の力を育成する上でも大きな影響を与えていると言えるでしょう。

確かにそうですね。それでは、ここで印刷教材にある「自己決定学習の段階モデル」を見てください。これは、GROWモデルと呼ばれるもので、成人学習者を学習の成熟度や自律性に基づいて4つの段階に分類しています。このモデルによれば、成人学習者は次の4段階に分けられます。

  • 段階1:学習者は自分で学習内容を決定できず、何をすべきか教えてくれる教師のような存在が必要な段階。
  • 段階2:自分で学習内容を決定できることもありますが、学習への動機付けや自信はあるものの、学ぶ内容について十分な知識がない段階。
  • 段階3:学習者は自分で学習を決定でき、学習スキルや知識もありますが、学習支援者がいれば特定の内容を深く学ぶことができる段階。
  • 段階4:学習者は自分で学習を決定し、学習を計画・実行・評価する能力を持っている段階。

そうですね。GROWモデルに基づく段階1から段階4までの整理は、自己決定学習ができる人とできない人がいるという点を成人学習の実践において重要な視点として提供していますね。