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オープニングアップ(社会心理学第11回)

自己開示するにも相手は必要なのかも。まあ日記にコッソリ書くのも効果はあるだろうけれど。

 

ベネベーカーの「オープニングアップ」。社会心理学には、臨床社会心理学がある。ストレスやトラウマを如何に克服するか。精神的健康を守る手段としての自己開示。非常に社会心理学的。ベネベーカーは自分を社会心理学者と説明している。自己開示。自分の気持や経験などの情報を他者に伝える。相手に自分を良く見せようと思ったりもする。社会心理学では自己提示と呼ぶ。自分のありのままを、他者に打ち明ける、自己開示。告白、に近いかも。精神的健康、ひいては身体的健康にどのような影響を与えるか、の研究。数多くの成果が紹介されている。
自己開示。自分の生い立ちや経験などプライベートな情報を打ち明ける。社会心理学では自己開示と呼ぶ。社会的コミュニケーションの一環として、循環的な関係がある。お互いに自己開示を繰り返すことで、互いに親密になる。二人の距離が縮まる。しかし効果はそれだけにとどまらない。健康状態や適応状態が良くなる、元気になることを実験で明らかに。自己開示をすることでどのような影響があるか?
個人的な情報を提供する。よく行われている。辛かった経験については誰にも話さずに生きてきた、という人も。忘れたい、という思いが。軽蔑されるかも、と胸の中に仕舞うことも。しかし、大きな不安となる。過去に辛い体験をして、自己開示をしなかった人ほど、様々な身体疾患になる可能性が高まる。抑制し続けてきたことが体調不良の原因に?多くの実験を。83年11月の最初の実験。過去のストレス経験やトラウマ経験について、健康にどのような影響が?46名の全寮制の大学生。実験参加者になったつもりで。4日連続で研究室に。指示に従い個人的な経験について開示する。文章を筆記することで。周りに人は居なかった。プライバシー保護の為、全て匿名で。筆記した文章もそのまま持ち帰って良いとされた。実験を始める前に、4つのグループに無作為に分けられた。第一グループ。つらい経験について、どのような経験でどのような感情を。辛い経験の具体的内容を。第二グループ。感情だけ。第3グループ。事実関係だけ。第四グループ、日常的な軽い話題を筆記。統制群になる。一緒に開示する第一グループ。開示群が3つなのは、どのような開示が効果的なのかを調べるため。健康状態にどのような変化が見られるかを調べる。実験の結果。開示群と統制群で差が。第一グループと第四グループで差が。第一グループは体調が悪くなる。4ヶ月後の追跡調査では、統制群に比べて開示前より健康不良が減っていた。自己開示をすることで、長期的にみると健康状態に大きな改善が。辛い体験の内容。大切な人が亡くなった話。失恋、喧嘩。薬物依存など。中流以上の大学生。比較的恵まれている層だが、辛い経験を。自分の感情も含めて開示することが健康に繋がる。後続の実験が続々と。枠組はそのまま利用されている。様々な実験の結果、かなり効果が広範囲に亘ることが分かる。感情への効果。開示の直後にはネガティブ感情を経験する。しかし追跡調査では、気分が向上している。幸福感など。プラスの効果が強く現れる。認知の効果。自己概念に対する認識が違ってくる。自分の理解が深まる。洞察が生まれる。ワーキングメモリの容量が増加する。難しい課題をこなすには、目の前の課題をしっかり認識する必要があるが、過去の経験に囚われがち。しかし未解決の話から解放され、ワーキングメモリに余裕が。慢性化した身体の緊張関係が和らぐ。不眠などの症状も緩和する。社会生活への効果。学業成績の向上。再就職率の増加。友人ネットワークの拡大。プラスの効果が。自己開示に関する研究は、多様な領域で行われている。一方、見いだせなかった研究も。統計的手法で統合して、全体としての効果を見出すメタ分析が行われている。これまでにも何度か行われている。86年から04年までの100件以上の研究について。自己開示にプラスの効果が。しかし、あまり強いものとは言えない。3日から5日するとして、それほど強い効果はない。自己開示によって症状が悪化する人もいる。健康な人が手がける健康法として、選択肢にはなる。自己開示に関する研究。開示にかける時間に多少の幅があったりする。細かには色々な違いが。メタ分析。よりはっきり生じやすい条件を見出す。性別年齢人種教育レベルは影響なし。場所については、個室の方が効果がより大きい。自宅の方が。プライバシーが守られた空間ではリラックスして出来る。プラスの効果は永遠に続くわけではない。生じるプロセスについての経験も。問いの答えを探す。研究結果は沢山報告されているが、身体まで元気になるのはどうしてか?総合的に考える必要がある。辛い経験をした時、不快感情を取り除きたいと考える。対処、コーピング。よく用いるのは問題焦点型の対処、状況に直接働きかけて、問題自体を変化させる。しかし中には難しいものもある。感情焦点型の対処。直接働きかけず、不快感情を鎮める。問題はどうにもならない場合。抑制型の対処。状況について考えないようにする。嫌な出来事を一時的に意識から放り出す事ができる。しかし、様々な面から問題が。出来事について繰り返し考えてしまう。理解を深める機会も奪ってしまう。深い感情が残ってしまいがち。付随思考の増加でワーキングメモリの容量も圧迫する。ネガティブな評価が持続し、ストレスが慢性化する。身体にも悪影響が。全身の緊張感が高まることでストレスに対応している。警戒状態。慢性化して緊張状態が長く続くと、身体機能が疲弊する。慢性疾患として表面化。密かに毒を出し続ける。心や身体を蝕む。出来事に向き合っていく、促進型の対処を行うことも可能。自己開示を行うことで、苦痛に慣れたり理解が深まる。否定的な認知や感情のコントロールが行いやすくなる。ストレス状態から解消される。身体的な緊張状態から解放される。身体状態が良くなる。心が軽くなると共に、身体状態が良くなる。心と身体は密接につながっている。自己開示研究と関連するテーマ。今後の方向性。開示を行うことが良い結果に繋がるメカニズムを。生理心理学などの最新の知見を取り入れながら。自己開示という行為が、健康に最大化するパターンを見出す。一定の成果を上げている。人が開示という対処行動を行うことを改めて捉え直す。開示実験の多くは相手を特定していない。しかし特定の開示相手がいるのが現実。相手からの評価も大きく影響すると考えられる。双方向的コミュニケーションの一環として捉えると、相手の感情の因子の考慮も。社会の中で生じる自己開示という行為の意味を。
打ち明け話をすると、身体状態が良くなるという意外な結果。特定の他者で無くても効果がある?実験室の外で行われた実験も。大きな自然災害に巻き込まれた者について長期に研究。人々が日常生活に戻っていく。経験した災害についてしきりと話し合うが、1ヶ月経つと話すのをしなくなってしまう。もっと話したいけれど、他の人が話したく無いために。2,3ヶ月経つと話す欲求が無くなっていく。自己開示は人と人とのコミュニケーション行為。信頼できる相手が必要。心の秘密を打ち明ける為には、安全だという状態が必要。分かっていても自己開示が出来ないことも。特定の人が居ない場合でも効果があるのは助けになる。日記などの形で言語化するのは難しくない筈。ずっと扱いやすい話になる。Internetは自己開示の場として有益。「インターネットにおける行動と心理」。掲示板などのインターネットのコミュニケーション。相手が見えなくてもコミュニケーションが出来る。自己開示がしやすい環境。しかし社会に開かれた存在。危険な面も。他にもトピックがあるので、自己開示に興味のある人は読むべき。

 

社会心理学 (放送大学教授)

社会心理学 (放送大学教授)