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病みながら生きるという生き方(中高年の心理臨床第5回)

自分の病を認識して一緒に生きることが必要とされるのだと思う。病気や障害と向き合っていくのが課題だと。

 

人間という生物の特性。様々。直立歩行。社会的な動物。一面の真理を。病みながら生きるという特性。人間はかなり大きな病気を抱えても生きられる。背景には進化の過程で病める者と生きるという選択を。人間らしい生き方。特に高齢者は何らかの病気や障害を抱えて生きるのが普通。ベートーヴェンと夏目漱石。2人の人間の手紙を題材に。
ベートーヴェン。1808年の「運命」。芸術作品の解釈は自由。ウィーン・フィルハーモニー。運命がドアを叩く。感情や心理状況を書く。運命という曲には心理的な回復過程が。聴覚障害とは?自覚したのは20代の後半から。01年の手紙。聴覚がひどく衰えている。耳が遠いことが自分を脅かす。厭世主義者に見えたかもしれない。社交も回らない。32歳の時には自殺を考えるまでに。ウィーン郊外からの手紙。何も聞こえない時、何たる屈辱であっただろう。治療を試みながらも。芸術が押しと止めた。すべて仕上げずに死ぬのは不可能。「英雄」を書き上げ直ぐに「運命」を取り上げる。4つの楽章を構成。障害受容の反映。ショック、否認、怒り、そして受容。聴覚障害から立ち直るのが象徴的に。第1楽章。深い絶望。第2楽章。時間の経過ともともに精神の安定を取り戻す。第3楽章。行進曲風に。第4楽章。歓喜の爆発。障害を乗り越え傑作を産み出すことが出来た。病者障害者と接する立場で。自ら経験した障害受容の過程が。多くの人々に愛された理由。日々の生活で様々な挫折からの立ち直りを経験。時代や民族を超えた名曲として。自らの障害の需要は自信を与える。手紙には苦悩を突き抜けて歓喜に至ると。27年の手紙。肯定的な面を見出す。聴覚障害で作曲家しか可能性が無くなった、一点集中的な。聴覚障害こそが作曲家としてベートーヴェンを。エジソン。後年のエジソンは障害に肯定的な評価を。他の気をそらす声を聞かなかった。難聴の効用。ブロードウェイでも邪魔されずにいられる。多くの邪魔から救ってくれる。トーキーに変わった時にも、演技を忘れずにいられると。難聴の人はなんてよく見えるだろう。悩んだこともあっただろうけれど。不利と言われる障害を前向きに。音に関わる発明や工夫が多いのも。芸術の為に自殺を思いとどまったベートーヴェン。司馬遷を。「史記」。連座して宮刑の罪に。古今の名作や傑作が逆境を契機にして。来たるべきものを考える。司馬遷も障害を克服する過程で想像力を。
精神障害を抱えて生きた夏目漱石。慶應3年に生まれ、明治とともに生きる。3回の睡眠耗弱。婦人の日記や本人の手紙。精神病的症状が。20代後半の第1期。噂されていると思ってしまう。松山の中学に。周囲は説得したが駄々っ子のようだった。最大の謎とされる松山行き。追跡妄想。松山に行っても悩まされた。この時の体験は「坊っちゃん」の設定に活かされている。熊本では落ち着く。英国に留学。再び精神状態が悪化。下宿の姉妹への追跡妄想から悪化。東京に戻っても症状はあった。自分の頭の中で色々なことを。妄想。こちらには見当もつかない。何もかもイジメる為にやっている。被害妄想。更に40代後半にも症状が再燃。あらぬ妄想を。幻聴や被害妄想、追跡妄想の症状。漱石は3回の病気に同じような。症状に対する対処法の変化。20代には松山に逃げている。妄想から逃げることで精神的安定を。松山でも俳句を。第2期では異なる対応。明治39年には親友への手紙で京都帝国大学の誘いを断ったと。京都の良さは分かっているが、愉快の少ないところで喧嘩をしてみたい。討ち死にするかどうかを。自分の心情について、10年前の事情を。松山に行っても不愉快な出来事は続く。圧迫が続く。東京を去ったから増幅した。進んで敵を打つことを。逃げずに仙台に留まる。第2期は状況の類似を認めつつも、対応を変えようとしている。かつての失敗に鑑み戦い抜く決意を。病的な状況から逃避するのではなく戦うという。戦闘的な作品に変化している。「吾輩は猫である」「坊っちゃん」。周囲と戦うという姿勢を。近隣住民が馬鹿にする。坊っちゃんが初めて当直した時に生徒が馬鹿にしている行為を。主人公を馬鹿にした声が。勧善懲悪的な結末。憤慨することがたくさんあるが、それを許すことが大事。悪を認識しつつも認めることを推奨している。第3期の漱石は精神的な安定法を他人に書くほど成長している。「こころ」や「道草」。内生的な作風に変化。結末は問題解決不可能性を。長く辛かった病気との戦いを通じて人間的成長を。
具体例としてベートーヴェンと夏目漱石を。苦悩の人生を歩んだが、病在るが故に創造性が。様々な苦悩をもたらしたが芸術家としては幸運だった。死に直結することがあるから予防や治療は重要だが。病や障害は免れがたい側面があることも事実。役割を考えるのも大事なこと。影響は様々だが、偉大なことを。休養が出来る。孤独で内省的になる。振り返って人生で真に大切なものを。警告として受け止める。一病息災。現実からの距離を取り相対化。可能性の限定で一点集中的な。生きることの意味に複眼的な。見過ごしてきたことにも価値を。人生に過大な要求が減る。期待が減り自分本来の道に。自分の限界を認識して謙虚になり、感謝できる。悲劇的な側面を、困難への耐性が。仕事の完成に。弱者に共感できる。マイノリティとしての立場からの発想が出来る。脳の活動を賦活。疾病利得を求める歪んたものもあるが。胃潰瘍の大出血で死の恐怖が少なくなることも。苦難を経験することによっても成長できる存在。病による苦痛を抱えながら。

 

中高年の心理臨床 (放送大学教材)

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