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アーレントの公共哲学(公共哲学第6回)

日頃から公共的問題を他者と意見交換する習慣はあるのだろうかと自問する必要がある。投票箱を越えた関心を持つことが必要。

 

齋藤純一。アーレントの公共哲学。06年にドイツで生まれた75年にニューヨークで亡くなったハンナ・アーレント。ユダヤ人。33年にドイツを逃れる。51年にアメリカの国籍を。その後は無国籍の難民に。公共性。19世紀半ばから20世紀後半には肯定的に使われていなかったことも。迎合という言葉で特徴づける。ハイデガー。ハイデガーの元で学ぶ。公共性の領域から垂直的に離脱することが個が生きる生の条件。カール・シュミット。空洞化した議会的公共性に頼らない。「世論」のリップマン。公共性の現状に否定的。「幻の公衆」。決定的に変えたのは「人間の条件」58年。ハーバーマス。アーレントがどのような公共性の理解を示したか。公共性を互いに異なる意見を持つ人の相互交渉の空間として。アーレントが意見の複数性を何故擁護したか。公共的空間の特徴。社会的なものに対しての批判。公共的空間において観察者の役割。
鍵となるのは複数性。世界に住まうのが複数の人々である事実に対応。量的に多数であるにとどまらず、その1つ1つが他に還元不可能。2つとない。ユニークである。人間であるという点で同一でありながら、過去や現在未来の他者と決して同じではない。時間軸に沿った複数性も指し示すが、世界は同じ側面を2人に示すことは決して無い。パースペクティブの複数性。意見の複数性を擁護、哲学の伝統にラディカルな批判を。ドクサを。意見の多義性を廃棄しようとする。プラトン哲学の影響。対話には真理へのプロセス。副次的役割以上は無い伝統。アーレントはドクサ、意見を擁護する。個人の主観的なものとして捉えていない。ドクサは主観的幻想でもなければ絶対的なものでもない。前提として、世界は各人に対して異なった形で広がっている。客観的ではないのを主観的だと考えずに。間主観性の地平に。他者と離れて存在するのではない。ドクサ、意見の複数性は共通の世界に対して人々は同一のポジションを示すことは出来ない。確認が異なるという事実から。世界を理解するためには自らの見方を他者の様々な見方と照らし合わせる必要がある。意見の複数性を認める、特権的な示唆は哲学王など誰にも与えられていないことを認める。公共的な領域は実践の領域ではなく、唯一全体の真理を。ポイエーシス、制作の領域に転化する。政治は真理を手にする者の支配に。人々の間の公共性は市民の専制から守らなければならない。複数性は政治的生活、公共的な生活の根本条件。政治的生活には他者の源泉、他者が現に居合わせていることが不可欠。政治的に語る。同じことからを出来る限り違う視点から。他者との意見の交換が継続するように語り合う。相互性の維持。互いを政治的に対等の者として扱う平等性。意見交換の継続は意見の代替不可能性の尊重により支えられる。各人の意見が尊重に値するのは生命への配慮ではなく、人々の間にある公共的な関心による。政治的コミュニケーションが利害の対立競合に還元されるなら、意見交換にかけられるのは。
一義的な真実を求める哲学への批判。全体主義のイデオロギー、大衆社会の画一性への批判。本質は一義的な世界観としてのイデオロギー。テロル。ナチズムやスターリン。一切の事象は一義的に解釈。必然的な推論、全体主義のイデオロギー的思考。徹底して避けようとするのは他者との相互交渉。避けようとしているのは交渉。引き起こされる脱中心化の経験。フィクションと呼ぶ。多義的に解釈するリアリティを無視する。完全に排除することを全体主義が。全体主義を大衆社会特有の現象として。他者が大衆との間を失う。自分自身に投げ返される。他者との関係性が公共性の領域から失われる。互いの意見に応答し合う関係の喪失。互いの意見に応答し合う関係の喪失。いわゆる世論。潜在的意見の一致を。人々の意見が一致すれば意見の交換は不要となる。政治的生活は。意見は意見間で初めて形成される。しかし大衆社会は意見形成においての相違を一掃する。複数性を奪い去る。世論の形成。意見は集団ではなくあくまで個人に帰属ことを強調。無国籍者、難民としての境遇にも即して。何を語ったかとは無関係に他者により処遇される暴力性。ある人を変更不可能な属性により判断する集合的な表象の暴力、言葉を奪い政治的な死に。
自由について。「自由とはなにか」。自由は思考の属性になる前に人々に動くことを可能にさせ、他者と出会うことを可能になる知。自由であるためには人は生命の必要から自らを解放する。自由は単なる開放に加えて他者と出会うことを必要とする。政治的に組織された世界を必要。公共的空間に自由は現れる。他者と出会うことが出来る。自由は公共的に他者と関係する自由。他者の源泉を必要とする。私的であることを他者の不在により。プライバシーの剥奪。あたかも存在しないかのよう。私的な状態にある人は他者に見聞きされる可能性を失う。不正義。私的な状態に強要される。孤独という境遇。大衆社会に広がっている。自由は公共的政治的な性格を持つ。自由をむしろ政治的な公共的なものから自由とする立場と対極に。消極的自由を。権力の乱用から守るのがバーリンは2つの自由の概念という講演で語る。全体主義。政治の最小化。全体主義の運動が政治的自由を奪うことから始まったことを軽視してるとアーレントは。ユダヤ人などから奪われたのは意見への権利であったと。行為への権利。他者の応答が無ければ意味がない。他者との関係のうちにあるのを諸権利と。他者を排除するのではなく他者の源泉を必要とする。個人的なものではなく複数の人との間で。相互応答が成り立つ場合。「革命について」。政治的生活を生きる共和政治の系譜に。政治的参加を手段として考えるのではなくネオアテナイ的な系譜に。自分の意に反して政治から排除されるのを問題視。投票箱以外にはないことを問題にする。市民として行為する機会、意見を交換し行為する機会が与えられんない。投票には全権力が与えられるのを危険視。投票箱以上の公共的空間が形成されていないから。それがあるときは公共的な事柄に意見の交換が。日々反復されている時に鍛えられる。政治的自由を複数性を条件とする。自分の意志を貫徹する主権的なものとは考えない。複数性の条件のもとでは主権と自由は両立しない。公共的空間では主権はなく自由に。1人ではなく複数の人が生きるという事実に基底。人々が自由であろうとすれば主権を放棄を。我と汝の親密性。そのような対話が閉じられている時代に求められる。政治的距離が欠けている。近しさには契機が欠ける。アーレントの公共性空間は限定のない複数性。互いに現れる空間。公共性を共通性により定義しないで、公共性を差により定義する。ミーティングプレース。公共的空間は絶えざる多元化により。
複数性の擁護に対して会話のない他者を排斥している?アーレントが政治的判断力を論じる。カントの言う普遍性の区別。超越論的普遍性を求めるのではなく一般性を。決して普遍的なものを求めない。政治的判断は自らを形成するに当たり他者を媒介すればするほど妥当に。判断を形成するものが会話していない他者の観点を知ろうとする動きに。複数性は限定されているという認識。現れようとする勇気に敏感に。公共的空間は世界に対する多元的パースペクティブや意見が互いにかわされる意味。全体主義は一義的イデオロギーに。大衆社会も同様に損なわれる。近代は疎外により特徴される。自分自身へと投げ返される。各人の生命への配慮を求める私的に編成。世界への関心の余地は無くなる。労働を軸にした組織体。社会とは労働が公共的空間に許される。後期近代は集合的生命権が関心事になるが、近代社会が生命への配慮で組織される。生命過程の安全を補強する行政へと還元され人々は正常とされる規範に順応した活動様式を。決定的に重要なのは社会がアクションを廃棄して無数の規則を課すことで一定の行動を。ことごとく正常化させ排除させる。社会的な領域は包括し統制する知見に達する。現代社会で平等が。公共的世界を征服し私的な世界になったものに過ぎない。社会的領域から排除されるのは公共的なもの。個々の生命を越えて存在する。生命への配慮に服属させ消費の対象とみなし公共性を規定しようとするのが近代社会の問題。画一的な行為により特徴づけて政治的な像を。生命ではなく世界への関心。逆に言えばアーレントの公共哲学は社会的なものを持っているものの問題点を。社会的なものと政治的なもの。二面的に対峙。多くの批判が。生命生活の必要に所要者とみなして私的なものを満たされるべき非政治的領域として描いたことへの批判。家事労働は非政治的問題ではない。私的な領域を脱政治化したことへの批判。共通世界をどのように扱ったかのラディカルな批判。カントとともに観察者の果たす役割を重視。カントがフランス革命で評価したのは危険と覚悟で共和政体を支持した観察者。人類の兆候。観察者の役割を行為者にも増して重要視。世界に現れる事柄に。観察者は批評を意見を表明することで共通世界に関与。判断のバイアスを避けられない行為者に比べて広い視野を持つ。同時代のことに判断を。過去の出来事を想起し思想を敢えて再現する。過去の思想を想起して未来の希望を喚起する。何が見られてこなかったのは聞かれてこなかったのかの判断。失われてしまったものを。行為者のように関与するのではなく、相互の判断を交換することで反省の次元を形成する。自らの判断を公にして議論するのが希薄になったことに政治的病理に。没思考性。全体主義の運動に加担したのはアイヒマンに典型を見る。他者に関わるのを。ごりありふれた凡庸なもの。意見と意見との交換で公共性を。自分で考えることは他者とのコミュニケーションに依存。立ち止まって考えることへの移行。公共的コミュニケーションなしにはなりたたない。絶対的なものを求めることへの批判。多元性を奪ってしまう。党による一元的な支配にも。同一の側面を2人には示さない。特権的なパースペクティブは存在しない。アイデンティティではなく複数性を基盤とする。

 

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