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態度と行動(現代社会心理学特論第6回)

心理学の研究はかなり複雑なのだと感じる。

 

森津太子。態度と行動。「態度」という言葉は日常生活でもよく使われる。物事に対し考えたり感じたりするのが外に出たり、身構えという意味で。社会心理学で使う場合は少し意味が異なる。ある特定の対象状況に対する行動の準備段階として態度を捉える。オルポートの定義。態度とは全ての個人の反応に対して影響を及ぼす経験を通じて精神的神経的準備状態。精神身体の両側面におけるある種の準備状態。特定の対象や行動に影響。今でこそ主要な研究テーマでは無くなったが、従来は社会心理学で古くから重要な概念だった。50年代では態度は中心的概念と考えられていた。70年代にかけて態度研究が社会心理学を席巻する。態度とは仮説的構成概念。実際はともかく、おそらくあるだろうと思われるもの。仮定することで便利なので仮の想定を。心を対象とする心理学では仮説的構成概念を数多く使う。態度はその代表的なもの。実際のところ、実体として見ることは出来ない。しかし個人の態度が分かればその事物に対しどのような行動を起こすか予測できる。目に見えない態度をなんとかして測定を。選挙前の世論調査。有権者の態度を測定することで誰に投票するかを。新商品の開発でモニターに試食をして意見を聞くという調査。態度を調べる。商品がどの程度買ってもらえるか予測。実際には態度と行動との関連は問題で、態度から行動を予測することは容易ではないが。態度の関心は研究者だけではない。態度とは一体どのようなものやどのような働きか。どのように変容するか。
態度は感情、認知、行動の3つの成分から構成されている。感情成分。対象への感情的反応。それが好きか嫌いか。対象が政治家であれ何であれ、抽象概念であれ、あらゆる対象に好き嫌いなどの感情的反応を持つ。認知成分。良い悪い、賛成反対など、信念や記憶など。ひいきにする野球チーム。好きだけでなく投打の記録や試合の記憶。行動成分。外から観察可能。特定の態度が刺激されるとそれに沿った行動が多い。対象に接近。否定的なら回避。多くの場合は、態度を構成する部分は大抵は一貫性がある。臓器移植に否定的なら希望しない。賛成するならカードを。早い時期から認知を中心にした理論を。認知革命よりずっと前に認知的さいごうせい理論が。単一の理論ではなく類似する考えに基づく。態度対象に対する認知要素間の矛盾の解消に。ハイラーによるバランス理論。ある人がある対象に対して抱く態度は。3者間の関係に。所有所属はプラス。非所有などはマイナス。本人対象他者の関係がプラス・マイナスで。三者の関係性として8つが。均衡状態と不均衡状態。4つずつ。均衡状態にあるときは安定しているが、不均衡状態にあるときは不安定で解消しようと関係性が変化する。どのような状態が均衡?それぞれの関係性を表すプラス・マイナスをかけ合わせてプラスなら均衡。マイナスなら不均衡。具体的な例で。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。その人に関するもの全てが憎くなる。本人は坊主を難いと思うのでマイナス。袈裟は所有物なのでプラス。この時、私が袈裟に対して好意をもつとプラスになるので、かけ合わせるとマイナスに。不均衡状態。均衡状態への変化を促す。袈裟が所有物であることは変えようがないので、本人が袈裟を嫌いにならない限り均衡状態にはならない。逆に嫌いならかけ合わせてプラスになる。均衡状態に。バランス理論は本人と対象に対し三者のバランスを取る形で。ユニークな理論。単純な定式化だが取り巻く関係性と態度をかなり上手く説明。自分と配偶者とペットなど様々な関係性を。認知的不協和理論。バランス理論以上に有名だが時間の都合上省略。多くの社会心理学の入門書を。社会的認知アプローチ以前に発展。最たる例が態度研究。皮肉なことに自前の認知理論が発達したので少し遅れたが。不要の声も。
情報処理的なアプローチ。精緻化見込みモデル。他者の態度を特定の方向に変化させることを説得と。臓器移植に否定的な人の意見を変える。セールストークやCM。態度変容に関する理論。どのていど綿密にメッセージを書くか。熟慮の程度と態度変容の可能性は2つの要因。どの程度の時間や労力を。動機づけの高さ。関心が高かったり責任を伴ったりするときは綿密にする動機づけ。認知欲求が高い人では説得内容を吟味する動機づけは常に高い。しかしそれだけではない。その説得内容を吟味する認知能力を。知識や理解力など。様々な事情で認知能力が一時的に低下。疲れていたり騒音が高かったりするとメッセージの吟味が出来ないなど。精緻化見込みモデルは2つの要因が高い場合のみ中心ルートに入り論理性などに着目。関連する経験や記憶を想起するなどして検討する。中心ルートでは精緻な情報処理が。質の高いメッセージが必要。中心ルートで態度変容が起こると反対に抵抗を。他方、動機づけと認知能力の片方両方が欠けている場合は周辺ルートに。表面的な特徴に注意が。ドラッグストアに歯磨き粉を買いに行く。様々な種類の。これまでも使っている歯磨き粉を。店員は別のものを勧める。中心ルートに。歯磨き粉の効用に。動機づけが高い。認知能力もあれば店員の話や成分を吟味して。歯磨き粉1つにそこまでする人も全てではない。知らなかったり疲れていたり、周辺ルートに。経由するには周辺手がかりが使用される。説明の内容を吟味しない内にたくさん説明されたから別の商品が良いと。店員が魅力的だから。これらは一時的なもの。次の機会ではまた別。2つの情報処理過程は2つの人間像に。認知的倹約家。周辺ルート。動機を保つ戦略家。認知的負担が高い情報処理を。中心ルート。態度変容の主体に焦点を当てるのが。説得メッセージの送りてとメッセージそのものと3つの関係を。送り手が魅力的か。態度変容に影響する。送り手の信憑性。話し方などが専門性を匂わせる。説得の受け手のためにと信頼性が高い場合は態度変容が起こりやすい。しかし信憑性は周辺ルートなどで中心ルートの場合は影響力は高くない。メッセージの内容。元来は強力。論拠が弱いと説得効果が低い。説得メッセージは認知能力が前提。知的能力が高い場合。知識水準が低いと論拠の強い弱いに関わらず態度変容が。受け手側の要因。自我関与。精緻化見込みモデルのように、メッセージの内容が重要な場合は慎重に吟味する。自我関与が低いと周辺ルートで処理。認知欲求という個人差も重要。認知的に負担があることを進んで。困難や新しいことを。認知欲求が高い人は中心ルートを。それでも認知能力が低ければ周辺ルートになることも。
こぼれ話。ロバート・チャルディーニ「影響力の武器」。84年にアメリカで初版が。5版を重ねる。日本でも14年に対応する3版目が。社会心理学者の翻訳書には異例。説得や交渉のテクニックを。受け手送り手メッセージの内容。受け入れやすい条件を6つの原理で。返報性の原理。いわゆるギブアンドテイク。社会心理学でよく使う。他者から何らかの恩義を受けると物品にせよ形のないものにせよ、何かお返しをしなければ。そうして説得を受けやすくなる。試供品を。何となく相手に悪いと思い買ってしまう。優秀なセールスマンは巧妙に利用。3年間の参与観察でセールスのテクニックなどを。軽妙な語り口で事例を数多く紹介していて、ビジネス書に入っていることも。特にチャルディーニのように防衛策を身につけるにも。
説得による態度変容。態度はそもそも容易に変化はしない。人は既存の態度を根拠付ける資料に。確証バイアス。自分の態度を指示するような意見には耳を傾けるが、そうでないものには耳を傾けない。自分の態度は自分で自由に決定したいという動機を。心理的リアクタンスという反発が。高圧的な言葉で態度変容を迫られると正反対に。ブーメラン効果。態度変容とする時は古いものから新しいものに。しかし残存する可能性も。二重態度。態度と言えば意識的なものばかりに着目したが、意識化できない潜在態度も。個人で一貫しない場合も。人種の偏見。顕在的にはともかく潜在的には偏見が。

 

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