日常的な意味内容や講学上の意味内容はズレている場合が多い。そこに落とし穴があり、ハマる初心者は多い。
-----講義録始め-----
第1回に続き、第2回の講義も「市民自治」という言葉の説明に焦点を当てます。今回は、この「市民自治」という概念を学問的に深掘りし、分析するアプローチを取りたいと思います。
「市民」という言葉は、2つの要素から成り立っています。この言葉は、外国からの翻訳語であり、日本語に取り入れられたものです。一般的に「市民」とは、ある市の住民を指すこともありますが、ここでの意味はそれだけではありません。社会科学の文脈では、外国語が翻訳されることで、その言葉の意味がすぐには理解しにくくなることがあります。このような背景を持つ「市民」という言葉を取り上げることは、社会科学入門としても非常に重要です。
社会科学の用語は、専門用語と日常用語の間に位置することが多いです。例えば、「市民」は日常用語としても使われますが、学問の文脈では特定の意味を持つことが多いです。同様に、「正義」や「権力」、「権威」といった言葉も、日常的な用途と学問的な用途での意味が異なることがあります。
「市民」という概念をどのように捉え、学問と実践の中でどう考えるべきかについての示唆を提供したいと思います。社会科学の用語は、事実を記述する意味と、あるべき姿を示す規範的な意味の両方を持つことが多いです。「市民」もその一例で、現実を分析するための言葉でありながら、理想的な姿を示す言葉でもあります。
日本において「市民」という言葉がどのように受け取られているかを考えると、「市民運動」という言葉が浮かび上がります。しかし、「市民運動」はしばしば特定のイメージで捉えられがちです。ここでは、客観的な意味で「市民」という言葉の意味を探求する必要があります。
私の専門領域は西洋政治や思想です。この領域では「概念史」という方法を用いて、概念が歴史的にどのように使われ、どのような意味を持ってきたのかを追うことができます。しかし、この講義でその方法を完全に採用すると、内容が大きく変わってしまうため、概念の歴史を意識しつつ、いくつかのタイプや類型に分けて、「市民」という概念の展開を考える方法を取ります。