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グリーフケアと多様なサポート(グリーフサポートと死生学第1回) #放送大学講義録

-----講義録始め------

 

この「いつかグリーフに居場所を与えて、グリーフと折り合いをつけていく」という考え方は、「早くグリーフを乗り越え克服する」という考え方と大きく異なります。もし、グリーフを抱える喪失体験者の実感が前者の考え方と重なるのであれば、後者の考え方に基づいて、例えば「1日も早く喪失の悲しみから立ち直らなければ」「悲しんでいても愛する人は帰ってこないのだから、元気を出して新たな人生を歩まなければ」といったことを言うのは、たとえそれが相手を励まし支えるつもりであっても、喪失体験者にさらなる苦難をもたらしてしまうことを私たちは認識するべきでしょう。当事者が自分の不甲斐なさや弱さを責め、すでに精一杯頑張っているにもかかわらず、努力が足りないからもっと頑張らなければと自分を精神的に追い込むよう追い打ちをかけてしまっては、グリーフを緩和するどころか逆に複雑化させてしまいます。

グリーフは変化しながら展開するプロセスであり、人によってその期間はとても短い場合もあれば、逆に数十年、何十年と長い場合もあります。また、グリーフの展開も連続的であったり断続的であったりします。そして、グリーフの現れ方も、はっきりと表出する人もいれば、ほとんど現れなかったり曖昧だったりする人もいます。このように、グリーフとは実に多様で個別性の高いプロセスです。これは、グリーフを抱える喪失体験者の捉え方、受け止め方やその人を取り巻く環境が一人ひとり異なるからであり、だからこそ、グリーフサポートの第一歩は、それぞれの喪失体験者が直面している個人的で多様なグリーフをそのまま受け止めて知ろうとすることから始まるのではないかと思います。

グリーフがプロセスであるように、そのサポートもまたプロセスです。相手のグリーフを受け止めようとすること、知ろうとすることは容易ではなく、時間と労力がかかるプロセスでしょう。皆さんの中には、自分にはそんなグリーフサポートを提供する力はないとか、サポートするにもそもそも何から始めたらいいのかわからないという方もおられるかもしれません。でも、焦らず、相手の歩みに合わせながら、例えば傾聴ボランティアとして当事者の方に耳を傾けたり、サポートグループに参加して当事者同士が思いを分かち合えるような場を設けたりといった情緒的サポートを提供していく。また、当事者が死別の悲しみや死別後の生活の変化によって家事や育児が難しくなっているのなら、その人の望む形で生活実践上の手助けをするといった道具的サポートを提案する。さらに、そうした体験者が自分の暮らす地域でどんなサポートが得られるのか探したり、自分が抱えているグリーフとは何なのかを理解したいと思った時に、求められている情報や知識を様々な媒体で発信して情報的サポートを展開する、などが考えられます。