-----講義録始め------
さて、第2次世界大戦後、我が国は法制度をはじめとする抜本的な制度の変更や再構築を迫られることになりました。最高法規である憲法は、旧憲法である大日本帝国憲法が改正され、民主主義、平和主義、国民主権を掲げる日本国憲法に生まれ変わりました。そして、憲法改正に合わせて、明治民法の家族に関する部分、具体的には民法第4編「親族」と民法第5編「相続」も大幅に改正されました。改正された民法は1948年(昭和23年)1月1日に施行されました。
この改正された民法は、当時「新民法」と呼ばれました。新民法は新しく設けられた第2条で、「この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として解釈しなければならない」と定めました。そして、先ほどお話しした家制度に関わる条文がすべて削除されました。
新民法第2条における「個人の尊厳」とは、かつての家という集団的な発想を排除し、集団単位から個人単位への転換を図るという趣旨です。また、明治民法の女性差別的な制度や条文も廃止され、両性の本質的平等が目指されることになりました。
しかし、明治民法から新民法への改正は、終戦から約2年という短い期間で行われたため、家制度的な条文を削除することが中心となり、新しい発想で新しい制度を盛り込むには時間が足りませんでした。
時代は昭和から平成、そして令和へと移っていきます。昭和の終わり頃から、社会の高齢化、少子化、国際化、情報化など、社会の基本的な構造の変化が強く認識されるようになりました。かつての新民法も、その後の社会の変化や国民の意識に適合しなくなってきたという指摘がされるようになっています。