ーーーーー講義録始めーーーーー
このように、財産の移転方法は民法で定められていますが、もう一つ重要な法律があります。それが税法です。税法は、私たちの生活に深く関わっています。
例えば、皆さんが会社で働いて給料を受け取るとき、所得税という税金を支払っています。この所得税は「所得税法」で定められています。また、皆さんがスーパーマーケットで食料品を購入し、代金を支払う際には消費税を支払っています。この消費税は「消費税法」で定められています。
このように、私たちが働いたり物を購入したりする際には、税金が発生し、その税金は法律に基づいて支払われるのです。家族間で財産が移転する場合も税金がかかることがあります。
ここで、家族間での財産移転に関して、相続、贈与、売買について見てみます。まず、相続に関しては「相続税」が課される場合があり、これは「相続税法」で定められています。次に、贈与については「贈与税」が課される場合がありますが、実際には「贈与税法」という独立した法律は存在せず、「相続税法」に贈与税の規定が含まれています。そして、売買に関しては、所得税などが課されることがあり、これは「所得税法」などの法律に基づいています。
税金には多くの種類があり、それぞれの税金は特定の法律、すなわち税法で定められています。
では、これらの税金の中でも「相続税」と「贈与税」についてもう少し詳しく見ていきましょう。
まず、相続税についてです。相続税は、相続人が相続によって財産を取得した際、その財産に対して課される税金です。ただし、相続人が取得したすべての財産に相続税が課されるわけではありません。相続税が課される財産から除外されるものとして、被相続人が支払わなければならない債務や葬式費用などがあります。また、被相続人の死亡により支払われる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数をかけた金額までは、相続税が課される財産から除外されます。
相続税は、相続税の申告を行い納税する必要がありますが、すべての相続人が申告をしなければならないわけではありません。相続税の申告が必要なのは、相続人が取得する遺産が基礎控除額を超える場合などです。相続税の基礎控除額は、「3000万円に600万円を法定相続人の数で掛けた金額」を加えた金額です。
例えば、被相続人が死亡し、法定相続人が3人いる場合、基礎控除額は「600万円 × 3 = 1800万円」を3000万円に加えた4800万円となります。この場合、相続人が4800万円を超える財産を取得した場合に相続税の申告が必要となります。
相続税の申告書は、このような書式です。ご覧いただいているのは申告書の第1票ですが、この後に第2票、第3票と続きます。相続税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に行います。これは通常、被相続人が亡くなった日が基準となります。申告書の提出先は、被相続人が死亡時に住所を有していた地域を管轄する税務署です。