ーーー講義録始めーーーー
インタビュアー:いま、今挙げていただいた問題点のうち、まず1点目の税負担の問題についてですが、具体的にどのような内容でしょうか。
福崎先生:そうですね、日本の贈与税や相続税は非常に基礎控除が小さく、税率も高いという特徴があります。例えば、現経営者が一生懸命経営されてきた結果、内部留保が5億円や6億円に達している企業を想定しますと、株価が3億円程度になるケースがよくあります。
その株を次世代、つまりお子さんに相続しようとすると、相続税がかかります。3億円の株を相続する場合、約4800万円の相続税が発生します。株式は経営権に直結するため、生前に株式を渡さないと円滑な事業承継は難しくなります。そのため、生前贈与を選ぶケースが多いのですが、3億円の株を一括で贈与すると、1億5800万円の贈与税がかかるというのが現状です。このように税負担が重いため、事業承継が進まず、結果として経営の若返りが遅れてしまうのです。
インタビュアー:では、税の問題について、税金は日本だけでなく外国にもありますが、国際的な比較についてはいかがでしょうか?
福崎先生:そうですね、日本の贈与税や相続税は国際的に見ても非常に厳しいものです。基礎控除はわずか3000万円しかなく、最高税率は55%に達します。これに対し、アメリカでは2019年の相続税において、基礎控除が1人当たり約12億円、夫婦だと約24億円もあります。日本の3000万円と比べると大きな差があります。アメリカでは相続税が課税されるケースは2019年で5500人ほどしかおらず、日本とは大きく異なります。日本では相続が発生したケースの約8%に相続税が課されるとされています。
また、イギリスでは相続税があるものの、7年以上前に行われた生前贈与については課税されないという制度があります。したがって、非上場企業の株式を7年以上前に次世代に渡しておけば、相続税はかかりません。この点でも、日本の税制は非常に厳しいです。
さらにドイツについては、配偶者には50万ユーロ、子ども1人当たりには40万ユーロの基礎控除が認められています。例えば、妻1人子ども2人の家庭では、合計で約1億5000万円の基礎控除があります。また、中小企業の株式のようにすぐに現金化できない財産については85%の評価減が適用されます。例えば1億円の株式でも、85%の評価減後には1500万円として扱われますので、相続税の負担が大きく軽減されます。これもまた、日本と比べると非常に有利な税制です。
最後に、中国についてですが、中国にはそもそも相続税が存在しません。こうして主要国であるアメリカ、イギリス、ドイツ、中国と比較しても、日本の資産税は非常に厳しいものとなっています。各国は資産承継に関する税制が緩和されている一方で、日本はまだ多くの課題を抱えています。
インタビュアー:日本と諸外国で、事業承継や資産承継にこれほど差があるというのは、今回のお話で初めて理解しました。