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フレイレとメジローの学習理論比較(成人の発達と学習第8回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

さて、フレイレは、解放を求め、対話を通じて行われる「課題提起型教育」を唱えたことでも有名です。課題提起型教育においては、学習者は実践を通じて、認識と行動を結びつけ、社会変革をもたらす行動に関わるようになるとされています。このような社会的行動は、さらに批判的な振り返りにより、継続的な学習サイクルにつながります。フレイレはこの課題提起型教育と対比して、「銀行預金型教育」という概念を提唱しています。

「銀行預金型教育」とは、変わった名称ですね。赤尾先生、これはどういった意味なのでしょうか。

はい、銀行預金型教育とは、まるで金融機関にお金を預けるように、生徒の頭を貯金箱に見立て、教師を預金者として例えたものです。教師が生徒の頭に次々と知識を詰め込む様子をフレイレは「銀行預金型教育」と表現しました。このような教育が続くと、学習者はただ受動的で、順応的になってしまうとフレイレは警告します。

一方、フレイレが目指す「課題提起型教育(Problem-Posing Education)」は、提示されたテーマや関心についての対話を通じ、学習者が自分の生活状況への認識を高め、意識化し、さらに社会を変える行動へとつなげていく、主体的な自己決定学習のプロセスと言えます。

フレイレの課題提起型教育は、自己決定学習のプロセスでもあるのですね。このように、第1の目標である「自己の成長」は個人的なものであり、第2の目標であるメジローの「変容的学習」においては、個人の内面的な価値観の変化を重視しています。

そして、第3の目標であるフレイレの「解放的学習」では、認識の変容を意識化した後に、さらに進んで社会的な行動や実践を行うことが学習の目標とされています。このように、自己決定によって行われた学習の成果は、個人の内部での変化から社会全体への変革へと広がっていくのです。

その通りです。この点で、メジローとフレイレの理論の違いが現れます。メジローの変容的学習理論では、新たな経験によって個人の認識が変容することに重点を置いていますが、必ずしも行動の変容までは求めていません。しかし、フレイレの理論では、識字教育を通じて認識と行動の変容が強く期待されており、自らの困難さの原因が社会にあると意識し、その抑圧的な社会を変えるための行動が求められているのです。

なるほど、メジローの理論に比べると、フレイレの理論は社会を変える行動へと結びつく、目的論的な変容的学習と言えるのですね。ここがメジローとフレイレの理論の大きな違いと言えるでしょう。