ーーーー講義録始めーーーー
地域コミュニティ団体の役割と市民自治の課題
ここでは、自治会や町内会など、地域に根ざした団体が市民自治において果たす役割について簡単に触れます。これらを「地域コミュニティ団体」と呼びます。
地域コミュニティ団体は、NPO法人のように市民の自発的な発意で組織されるものではなく、土地に住むことで半ば自動的に組織に属する場合が多いのが特徴です。
地域コミュニティ団体の歴史と現状
松下圭一氏の市民自治論では、都市型社会の市民自治と、旧来の農村型社会における「国家感知型」の仕組みが対立する概念として論じられました。地域コミュニティ団体は、農村型社会における「感知のシステム」を色濃く残しており、その機能が現在も一部で続いています。
一方、自治会や町内会に対しては「村八分」のような弊害が指摘されることもあります。しかし、防犯や防災など地域課題への最初の対応を担う団体としての重要性を無視することはできません。
地域コミュニティ団体とNPO法人の役割分担
地域コミュニティ団体とNPO法人は、異なる特性を持ちながらも、市民自治や公共課題の解決において相補的な役割を果たしています。地域コミュニティ団体は「横のつながり」を担い、NPO法人は特定の事業や専門性を生かした「縦のつながり」を担当します。その上に行政が支援の仕組みを提供することで、地域における公共活動が促進される仕組みとなっています。
例えば、防災の例を挙げると、自然災害が発生した際には地域コミュニティ団体が避難所の運営などを行い、その後、NPO法人が物資の支援や専門的なサービスを提供することで、地域全体が協力し合う形が現実的です(印刷教材「図7-7」参照)。
市民参加の衰退とその課題
近年、地域コミュニティ団体や市民団体にはいくつかの課題が見られます:
-
加入率の低下と高齢化
自治会や町内会の加入率が低下し、高齢化に伴って活動水準も低下している状況が指摘されています。 -
市民運動への関心の減少
市民団体や社会運動への参加率が下がり、活動が以前ほど活発でないことが課題とされています。 -
「市民」という概念への忌避感
一部には、「市民」という言葉そのものに否定的な反応を示す風潮も見られます。
これらの現象は「市民参加の衰退」や「市民自治の危機」として指摘されています。市民自治を発展させるためには、こうした課題を評価・分析し、克服していくことが重要です。
成功事例から学ぶ必要性
市民参加を再活性化するためには、地域コミュニティ団体やNPO法人の成功事例を学び、それを他地域で応用することが有効です。市民自治の発展に向けた取り組みには、柔軟で現実的な対応が求められています。