ーーーー講義録始めーーーー
最後に、このような消費社会化に対応する形で、学校が公共的な場から市場化する場へと変化しつつあるという点について指摘しておきたいと思います。消費社会が浸透する中で、教育は公共的なものから私的な顧客サービスへと変化しているという見方が徐々に広がっています。
親や生徒たちは、より良い教育サービスを求めて情報を収集し、その中から自分たちのニーズに合った学校や教育を選択するようになりました。これにより、学校や教育をサービスとして捉える見方が一般化してきています。
どのような教育を子どもに与えるかという判断が、学校や教師ではなく親や生徒自身に委ねられるようになりつつあります。この傾向には、ポジティブな側面とネガティブな側面の両方が含まれています。ポジティブな面では、生徒自身の選択や主体性を重視する教育へと繋がるという期待があります。
一方で、どの学校や教育サービスを選択するかが親や生徒に委ねられることで、教育格差が拡大するリスクも大きくなります。教育の市場化は、良質なサービスを提供できる学校とそうでない学校の間に格差を生み出します。そして、どのサービスを選択するかは、家庭の社会的・経済的背景によって大きく影響を受けます。
経済的に豊かで、様々なネットワークを持ち有益な情報を得られる家庭では、より良い教育を子どもに提供できます。しかし、情報へのアクセスが限られていたり、経済的理由で選択肢が制約されている家庭では、子どもに与えられる教育の質が大きく制限されることになります。
このように、消費社会化と教育の市場化の進展は、家庭の文化資本や社会関係資本が子どもの教育の質や将来の選択肢に直接的な影響を与えるという現実を浮き彫りにしています。
生徒文化は、学校文化を補完し支える役割から、学校の権威や存立基盤に対する懸念や抵抗としての反学校文化、さらには居場所としての学校文化に多様な意味付けを与えるサブカルチャーへと変化してきました。このような生徒文化の変化は、学校空間を成り立たせてきた意味の変化を反映しています。
コンサマトリー化する学校空間において、生徒文化がどのように形成され、展開していくのかは、現代の学校空間の意味や存立を考える上で重要な課題です。
今回は高校生の文化を中心に考察しましたが、次回は「学生文化と教養の変容」をテーマに、戦前から現代までの学生文化について掘り下げて考えていきたいと思います。