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リトルワールド展示構想と進化展示の魅力(博物館展示論第1回)#放送大学講義録

以下の数エントリーは、収録が行われた数年前の情報であることを断っておく。

現在の本館の展示は、こちら

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

次に、リトルワールド本館の構想について、館長の話を伺いました。

全体としては、本館と野外展示で、「人間の本質」と「多様性」を表現することを目指して構成されています。本館を5つの展示室に分けた背景について、以下のような説明がありました。

文化人類学者・石田英一郎氏の影響
文化人類学の教えによれば、人間の文化は「技術」「社会」「言語」「価値」の4つの要素に分けられるとされます。ただし、人間を語る際にはこれらに加えて、生物としての側面を無視することはできません。この「生物的側面」と「文化的側面」は不可分のものであり、本館ではこれらを伝えるために「進化」を展示テーマに加えました。

その結果、本館は以下の5つの展示室で構成されています。

  1. 進化
  2. 技術
  3. 社会
  4. 言語
  5. 価値

各展示室は、人間の普遍性(共通性)と文化的多様性を同時に示すことを目指しています。展示室を巡ることで、文化や生活様式が異なっていても、根本には人間としての共通性があることが感じられるように設計されています。


第1展示室「進化」の構想と展示内容
進化の展示では、「人類の一体性」と「生物としての人間」をテーマに、人類がどのように進化してきたかを示しています。人間が生物界に属する一員であり、他の動物と区別される独特の存在であることを理解することを目的としています。展示内容は以下の通りです:

  1. 化石の展示
    多くはレプリカですが、人類の進化過程を示す重要な化石を展示。体の特徴や変化を具体的に理解できる構成になっています。

  2. 生活様式と道具
    人類が各時代にどのような生活を送り、どのような道具を使用・製作していたかを紹介。生活と文化の進化を実感できる展示です。

  3. 芸術作品
    洞窟絵画などの初期芸術作品を通じて、人間の創造性が進化の過程でどのように発展したかを示しています。これらの展示は、現代の人間に通じる基礎が5万~3万年前に形成されたことを物語っています。


このように、進化の展示室は「体の進化」と「文化の発展」の両面を包括的に理解できる場となっています。例えば、洞窟絵画のようなリアルな動物の絵を通じて、当時の人々の芸術性や文化的達成を視覚的に体感できる工夫がされています。

リトルワールドの展示構想は、人類の普遍性と多様性を融合させた独自性の高いものであり、その基本理念が体現されています。