ーーーー講義録始めーーーー
リトルワールドの具体的な展示を通じて、展示形態について考えてきましたが、このような形態の分類には明確な定義があるわけではありません。しかし、一定の基準を持つことは、展示を具現化する際にメッセージをどのように伝えるかを考える上で非常に有効です。
展示の根幹に関わる分類として、「ものに語らせる」か「もので語る」かという対比が挙げられます。前者は、単体の資料を中心に鑑賞する展示が典型的であり、後者は構造展示などによって背景や内容を伝える展示です。この対比は展示の基本的な類型であり、今後の議論でも繰り返し登場します。ここでしっかりと理解しておいてください。
これまで、日本には文化人類学の博物館がありませんでした。そのため、リトルワールドの設立は1つの契機となり、その後に国立民族学博物館(民博)や類似施設が誕生しました。民博が先行していた面もありますが、リトルワールドは異なる方向性を意識して運営されました。
民博の運営方針を決定する際には、「新しいものと古いもの」「都市文化と非都市文化」という4つの視点を融合させることが議論されました。文化人類学は伝統的に「古いもの」や「非都市文化」に焦点を当ててきましたが、民博は新しい視点を加えることを目指しました。この考え方はリトルワールドにも影響を与えました。
リトルワールドでは、日本人にとって馴染みのない外国文化を紹介する際、「都市の新しい文化」だけでなく、「古い文化」や「非都市文化」にも焦点を当てることを重視しました。それにより、多様な文化の側面を観覧者に理解してもらえるよう工夫しています。
次回は、リトルワールドの野外展示に焦点を当て、その具体的な内容を紹介します。