F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

歴史に刻まれたインフルエンザ流行(感染症と生体防御第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

インフルエンザの概要と世界的流行

インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染により、主に上気道に炎症を引き起こす感染症です。典型的な症状として、咽頭痛、咳、痰などの上気道炎の症状に加え、頭痛、筋肉痛、関節痛を伴う発熱がみられ、時には39度以上の高熱を示すことがあります。多くの場合、症状は数日で自然に回復します。

インフルエンザの流行の中でも最大規模とされるのは、1918年から1919年にかけて世界的に大流行したスペイン風邪です。推定感染者数は約6億人、死者数は4000万~5000万とされ、当時の世界人口は約18~20億人でした。これにより、世界人口の約3割が感染し、感染者のうち約2~3%が死亡したと推定されます。スペイン風邪は、疫病1回の流行による死者数としては人類史上最大のものと考えられています。

スペイン風邪以降も、1957年のアジア風邪、1968年の香港風邪、1977年のロシア風邪(または新型インフルエンザ)などが世界的に大流行しましたが、いずれもスペイン風邪ほどの死亡者数は報告されていません。

次に、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザH1N1(2009年型インフルエンザ)について説明します。
2009年3月、メキシコを発端に新型インフルエンザが流行しました。当初、懸念されていた高病原性鳥インフルエンザではなく、豚由来のH1N1型インフルエンザウイルスであることが判明しました。病原性はそれほど高くなかったものの、感染力は強く、日本では約2000万人以上が感染したと推定されています。無症性感染も含めると、日本国民の約4分の1から3分の1が感染した可能性があると考えられています。

その後、2009年(平成21年)に発生した新型インフルエンザH1N1は、当初の新型感染症としての扱いから、徐々に通常の季節性インフルエンザの一種として分類されるようになり、現在は「インフルエンザH1N1(2009)」と呼ばれています。