ーーーー講義録始めーーーー
ミーティングでの行き詰まりを感じる中、ヤマさんが中心となりセルフヘルプグループを立ち上げたと記憶しています。そのグループでの経験を通じ、何か新たに気づいたことはありましたか。
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セルフヘルプグループは、クリニックのミーティングとは異なり、参加者が自分の体験や思いを率直に語る場です。ここでは、他の参加者の発言に対して意見や非難をすることは一切なく、各自が自分自身のために語り合います。
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今振り返ると、私にとって大きなテーマは価値観の転換でした。病気になる前は、学校を卒業し、良い会社に就職して豊かな生活を送るという、誰もが持つ当たり前の夢を抱いていました。しかし、精神病になりできないことが増えると、社会の底辺にいると感じ、上を目指すことが無理だと思うようになりました。この現実に絶望し、その思いをミーティングで何度も語り合いました。
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その過程で、会社に就職し良い暮らしを送るという価値観は、実は親の期待や受験競争を通じて刷り込まれたものであり、本物ではなかったのではないかと疑問を持つようになりました。病気の宣告を受け「誰からも相手にされない」という現実と向き合う中で、他人を下に見て自分の価値を確認しようとする寂しい価値観に気づき、それが本来の自分ではないと認識するに至りました。
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また、セルフヘルプグループで「自分を掘り下げる」とは、ひとつのテーマについて繰り返し正直に語り合い、自分の本当の気持ちに向き合うことを意味します。同じことを何度も話す中で、「まだ本当の自分になれていない」という思いが次第に明確になっていきました。
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このように、セルフヘルプグループでの経験は、自己理解を深め、価値観の転換を促す重要なプロセスとなったのです。
【図表:セルフヘルプグループでの自己掘り下げプロセス】
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初期段階
- 参加者が自身の体験を語り、現状の絶望感や価値観を共有する。
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自己疑問・価値観の転換
- 病気前に抱いていた夢や価値観を見直し、刷り込まれた価値観への疑問を抱く。
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自己掘り下げの深化
- 同じテーマを繰り返し話し合い、本当の自分に気づくプロセスが進展する。
このプロセスを通じて、参加者は自らの内面に正直になり、より実りあるリカバリーへの道を歩むことができました。