ーーーー講義録始めーーーー
【インタビュー:支援者に求めるメッセージ】
インタビュアー:
では、最後に、今後どのように他の人たちに伝えていきたいか、何を伝えたいと思いますか。
Yさん:
僕の経験から言うと、リカバリー、つまり回復していく過程で最も大事なのは「自分の価値観を紡ぎ出すこと」だと感じています。価値観があってこそ、本当の意味で生きていけるのです。僕の場合、病気になる前の価値観に固執していたため、できないことや自分の無力さばかりに目が向いてしまいました。しかし、病気であることやできないことを正直に認めた上で、これからどう生きるのか、何のために生きるのか、本当に必要なものは何かを一生懸命考え、掘り下げることで、新しい価値観が育まれ、自分らしく生き直すことができるようになりました。
インタビュアー:
Yさん、今日はありがとうございました。
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【まとめ】
今回、Yさんのリカバリー体験を通して、精神障害からの回復は単なる症状の改善だけでなく、価値観の転換と自己再構築が大きな役割を果たすことが示されました。特に、同じ病気を持つ仲間との関わりや、支援者からの適切なサポートが、本人が自分自身を正直に語り、成長するための大きな力になっていることが強調されました。
支援者は、その人それぞれの状態や状況に応じた適切な支援を行い、過保護にならず、本人が現実と向き合い成長できる環境を整えることが求められます。この講義では、精神保健福祉の実践現場におけるリカバリーの概念と、その支援の在り方について説明し、当事者の実体験を通してリカバリーの重要性を伝えました。
【図表:リカバリー支援における価値観転換プロセス】
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価値観の再評価
- 病気前の価値観と現実のギャップを認識
- 自己否定から脱却するための内省 -
自己探求と掘り下げ
- 「何のために生きるか」「本当に必要なものは何か」を探求
- 仲間や支援者との対話を通じた自己理解の深化 -
新たな価値観の育成
- 自己の経験を基にした新たな価値観の確立
- 自分らしく生き直すための環境整備
このように、リカバリーは病気そのものの改善を超え、本人が自らの価値観を再構築し、新たな自己として生きるための長いプロセスであると改めて実感できます。