F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

身寄りがない患者支援体制の改革事例(社会福祉実践とは何か第8回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

「なるほど、どのケースもそれぞれに葛藤があったのではないかと感じます。そのような思いの積み重ねの中で、病院内でさまざまな取り組みを行ってきたとお聞きしています。約10年間でどのような変化や取り組みがあったのか教えていただけますか?」

「ええ、私が初めて『身寄りがない』、もしくは実質的に支援者がいない方のケースに出会ったのは、2000年ごろ、10件ほどだったかと思います。当初は、身寄りがないことがどのような問題を引き起こすのか、担当を通じて痛感しました。現代の日本は、家族や親族、つまりサポートしてくれる人がいることを前提として制度が作られているため、そういった支援が受けられない場合に、入院時の費用負担、買い物の手配、亡くなった後の対応、さらには治療方針の決定など、さまざまな問題が発生します。もちろん、こうした問題に伴う処置に関しても、関係者がそのケースを忌避することもあり、何か問題が起こった際に家族が対応すべきかどうかといった不安も生じます。」

「その中で、私が取り組んできたことは、身寄りがないという理由だけで支援が阻まれてはいけないと考え、まずは病院全体でそのような方々をしっかり受け入れ、問題なく支援が継続できる体制を整えることでした。具体的には、各部署でこれらの問題に対してどのように対応するかを話し合い、整理・整頓を行いました。また、法的な課題も絡むため、知り合いの弁護士にも相談しながら、問題解決のための方法をいくつか検討し、実際に実施してきました。結果、当院では、身寄りがなくても医療を受ける権利を保障し、断ることがない体制を構築することができました。」

「では、最初にどのような取り組みから始められたのですか?」

「最初に取り組んだのは、誤解を解消するための啓発活動です。『身寄りがない人』に対して、医療機関がどのような支援を行っているのか、またそれが決して大きな負担ではないということを、内部で周知徹底しました。病院は治療を行う場所であり、患者の同意が重要な機能の一つですが、現行の制度では本人のみが同意できる医療行為もあるため、解決が難しい問題もあります。そうした中で、厚生労働省のガイドラインを参考にしながら、いわゆる意思決定支援の仕組みを整備していったのです。」


このように、支援の現場では、身寄りがない・孤立している患者に対して、多方面からのアプローチと内部体制の整備が求められ、日々改善に取り組んでいる現状があります。