痩せについては過去に私も言われたことがある。
ーーーー講義録始めーーーー
これまで肥満について述べてきましたが、その**逆の状態である「やせ」**についても医学的に注意が必要です。
やせは厳密には生活習慣病には分類されませんが、特に日本においては若年女性の過度なやせが深刻な公衆衛生上の問題となっています。ここでは、「やせ」の問題にも目を向けておきましょう。
下記の図(※図表は講義資料にて提示)には、平成21年度(2009年度)から令和元年度(2019年度)までの国民健康・栄養調査における、「やせ(BMI<18.5)」の人の割合の推移が示されています。
最新の令和元年度(2019年度)の調査によると、BMIが18.5未満の者の割合は:
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男性:3.9%
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女性:11.5%
となっており、特に注目すべきは**20歳代女性のやせの割合が20.7%**と、5人に1人がやせであるという点です。
やせている成人女性は、普通体重の女性と比較して、骨密度が低く、体脂肪率がかえって高いことも報告されています(厚生労働省資料および日本骨代謝学会の見解による)。
日本人女性のやせには、過剰なダイエット志向が背景にあるとされます。もちろん「やせたい」という願望は、世界中の若年女性に共通する普遍的な心理傾向ではありますが、実際にやせが広範にみられるのは日本人女性に特有の現象と報告されています。
このような背景には、マスメディアの影響が指摘されています。ファッションモデルの多くは、診断基準上「痩せすぎ」に分類されるBMI値であることが知られており、たとえばアメリカの研究では、雑誌モデルの70%以上がBMI18.5未満であるとされています(International Journal of Eating Disorders, 2001)。
欧州諸国ではすでに、若年女性の摂食障害を助長する懸念から、以下のような規制措置が始まっています:
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BMI18未満のモデルのファッションショー出場禁止
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過度なダイエットを促進する広告の規制
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未成年向けの痩身メッセージの制限
一方、日本でも健康増進のための国家計画である「健康日本21(第二次)」において、「若年女性のやせの割合を減らす」という目標は掲げられていますが、現時点では実効性ある具体的施策は十分とは言えません。
さらに、若い女性の過剰な・不健康なダイエット行動は、**摂食障害(神経性やせ症・神経性過食症)**や、うつ傾向、自己評価の低下、月経異常などの精神的・身体的問題を引き起こすリスクがあることも、数多くの医学研究で報告されています。