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糖尿病分類と日本の有病率解説(食と健康第14回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

2. 糖尿病・高血圧・動脈硬化・脂質異常症

2‑1. 糖尿病

血糖値の調節機構

  • 正常な成人では、 空腹時血糖70~100 mg/dL、食後でも 140 mg/dL以下 に保たれています。

    • 食後に血糖が上がると膵β細胞から インスリン が分泌され、組織での糖取り込みが促進されます。

  • 空腹時や運動時にはインスリン分泌が抑制される一方、 グルカゴンコルチゾールアドレナリン などの血糖上昇ホルモンが分泌され、血糖値を維持します。

糖尿病の分類

  1. 1型糖尿病

    • 自己免疫反応で膵β細胞が破壊され、インスリン分泌が著減または消失。

    • 若年発症例が多く、発症初期にケトアシドーシスを起こしやすいため、速やかなインスリン補充が必須です。

  2. 2型糖尿病

    • 日本人患者の約95%を占める典型的な生活習慣病型糖尿病。

    • 肥満・運動不足などの後天的要因に加え、遺伝素因が関与。

    • 病態は「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」の混在。

    • 合併症として、糖尿病網膜症による失明(年間約3,000人)、糖尿病性腎症による透析導入(年間約15,000人)が知られています。

  3. その他の特定の機序による糖尿病

    • 遺伝子異常(MODYなど)、膵疾患、内分泌疾患、薬剤性など。

  4. 妊娠糖尿病

    • 妊娠中に初めて発見・発症した糖代謝異常。

    • 母体高血糖で巨大児(4,000g以上)リスク増、胎盤機能障害で低出生体重児リスクも。

    • 東京都内で妊婦の約10%が妊娠糖尿病と報告されています。

糖尿病の疫学

  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和元年度)」では、 糖尿病が強く疑われる者 の割合が成人男性で19.7%、成人女性で10.8%。

  • 50代以降に増加し、70歳以上では男性約25%、女性約20%が該当。

  • 戦後数十年で患者数は約10倍に増加し、食事の欧米化や身体活動量減少が主因と考えられています。


以降、高血圧動脈硬化脂質異常症について順次解説します。