ーーーー講義録始めーーーー
2. 糖尿病・高血圧・動脈硬化・脂質異常症
2‑1. 糖尿病
血糖値の調節機構
-
正常な成人では、 空腹時血糖70~100 mg/dL、食後でも 140 mg/dL以下 に保たれています。
-
食後に血糖が上がると膵β細胞から インスリン が分泌され、組織での糖取り込みが促進されます。
-
-
空腹時や運動時にはインスリン分泌が抑制される一方、 グルカゴン・コルチゾール・アドレナリン などの血糖上昇ホルモンが分泌され、血糖値を維持します。
糖尿病の分類
-
1型糖尿病
-
自己免疫反応で膵β細胞が破壊され、インスリン分泌が著減または消失。
-
若年発症例が多く、発症初期にケトアシドーシスを起こしやすいため、速やかなインスリン補充が必須です。
-
-
2型糖尿病
-
日本人患者の約95%を占める典型的な生活習慣病型糖尿病。
-
肥満・運動不足などの後天的要因に加え、遺伝素因が関与。
-
病態は「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」の混在。
-
合併症として、糖尿病網膜症による失明(年間約3,000人)、糖尿病性腎症による透析導入(年間約15,000人)が知られています。
-
-
その他の特定の機序による糖尿病
-
遺伝子異常(MODYなど)、膵疾患、内分泌疾患、薬剤性など。
-
-
妊娠糖尿病
-
妊娠中に初めて発見・発症した糖代謝異常。
-
母体高血糖で巨大児(4,000g以上)リスク増、胎盤機能障害で低出生体重児リスクも。
-
東京都内で妊婦の約10%が妊娠糖尿病と報告されています。
-
糖尿病の疫学
-
厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和元年度)」では、 糖尿病が強く疑われる者 の割合が成人男性で19.7%、成人女性で10.8%。
-
50代以降に増加し、70歳以上では男性約25%、女性約20%が該当。
-
戦後数十年で患者数は約10倍に増加し、食事の欧米化や身体活動量減少が主因と考えられています。
以降、高血圧、動脈硬化、脂質異常症について順次解説します。