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脂肪炎症とEPA/DHAの抗炎症作用(食と健康第14回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

メタボリックシンドロームの中核を成す肥満症脂質異常症では、肥大化した脂肪細胞が炎症性サイトカインを分泌し、脂肪組織にマクロファージを呼び寄せます。脂肪細胞から過剰に放出される遊離脂肪酸、特にパルミチン酸などの飽和脂肪酸は、脂肪組織に浸潤したマクロファージを**Toll‑like receptor 4(TLR4)**を介して活性化します。

活性化されたマクロファージは炎症性サイトカインのひとつであるTNF‑αを分泌します。TNF‑αは脂肪細胞に作用して、脂肪細胞が分泌する抗炎症性アディポカイン(例:アディポネクチン)の分泌を抑制し、炎症をさらに増幅させます。同時にTNF‑αは脂肪細胞内でのリポリシス(脂肪分解)を促進し、さらなる遊離脂肪酸の放出を招いてマクロファージを活性化する――こうした脂肪細胞とマクロファージの悪循環が慢性炎症を助長し、組織障害を進行させると考えられています。

一方、n‑3系多価不飽和脂肪酸である**エイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)**は、アディポネクチンなどのアディポカイン分泌を促進するとともに、TLR4の活性化を抑制することで、脂肪組織の炎症を抑える作用が期待されています。