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腸内ディスバイオシスと生活習慣病の関係(食と健康第14回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)と生活習慣病

ディスバイオシスとは

本来は少数派であるべき病原性細菌の異常増殖や、逆に有用菌(プロバイオティクス)が減少するなど、腸内細菌叢のバランスが崩れた状態を「ディスバイオシス」と呼びます。近年、この状態が多くの生活習慣病と関連することが明らかになってきました。

ディスバイオシスがもたらすメカニズム

  1. 過剰なエネルギー吸収
    一部の細菌は食物からより多くのエネルギーを抽出し、宿主に過剰なエネルギー供給をもたらすとされています。

  2. 短鎖脂肪酸(SCFA)の減少

    • 良好な腸内細菌叢(ユーバイオシス)では、食物繊維を発酵して酢酸・プロピオン酸・酪酸などのSCFAを産生し、

      • 腸上皮バリア機能を強化

      • 制御性T細胞(Treg)の分化を促し、全身の炎症を抑制

    • ディスバイオシスではこれらのSCFA産生が低下し、バリア機能・抗炎症機構が破綻することにより、

      • 慢性炎症

      • インスリン抵抗性の増大

      • 糖尿病やメタボリックシンドロームのリスク上昇

  3. 有害代謝産物の増加

    • クロストリジウム属など特定菌は、肉類のコリンカルニチンから**トリメチルアミン(TMA)**を産生。

    • 肝臓で**トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)**に変換され、動脈硬化を促進すると報告。

    • さらに、胆汁酸の一種であるコール酸を、同じく菌種がデオキシコール酸に変換し、

      • 肝細胞で炎症性サイトカインを誘導し、肝臓がんリスク増加にも関与する可能性。


これらの知見から、**腸内細菌叢のバランス維持(プロバイオティクス・プレバイオティクスの活用)**は、生活習慣病予防・改善において極めて重要であると考えられます。