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脳消費と調理仮説による人類進化(食と健康第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

脳のエネルギー消費と食の関係

脳は非常にエネルギーを消費する器官です。成人の脳は、安静時代謝量のおよそ20%を消費するとされ、一方でチンパンジーなどのサル類では約8%です。さらに、生後間もない新生児では、その消費割合が60%程度に達すると報告されています。


大脳の拡大と食料確保

脳を大きくするには大量のエネルギーが必要であり、その確保は食べ物の獲得法と深く結びつきます。

  1. アウストラロピテクス(約400万年前)

    • 推定脳容量:約450 cm³

  2. ホモ・エレクトス(約200万年前)

    • 推定脳容量:約900 cm³(アウストラロピテクスの約2倍)

    • 同期期には初期石器(約260万年前)を用い、食材の切断・加工で消化効率を向上

  3. ホモ・サピエンス(約20万年前)

    • 現生人類の脳容量:約1,300 cm³

    • 火の制御による加熱調理が可能となり、さらに消化吸収効率と食料保存性を高めたと考えられます


「料理仮説(調理仮説)」

人類が火を用いて調理を始めたことで、

  • タンパク質デンプンの消化吸収が飛躍的に向上し、

  • 腸管の長さが短くても十分な栄養が得られるようになり、

  • 余剰エネルギーを脳の肥大化に回せるようになった

という説が「料理仮説(cooking hypothesis)」として提唱されています。これにより、ホモ・サピエンスは長時間の採食や長大な消化管を必要とする類人猿とは異なる、効率的なエネルギー利用を達成しました。


このように、食べ物の調理・加工技術の発展が、人類の脳拡大文化文明の形成を支えた大きな要因と言えます。