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スポーツ政策の歴史とオリンピック(健康長寿のためのスポートロジー第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

2015年に設置されたスポーツ庁は、日本のスポーツ政策の司令塔として位置づけられています。スポーツ庁を訪問し、第二代スポーツ庁長官の室伏広治(むろふし こうじ)長官にお会いし、お話を伺いました。では、当日のインタビュー映像をご覧ください。

室伏長官
「私たちスポーツ庁は、2013年9月7日に2020年東京オリンピックの開催が決定した後、その準備をより計画的かつ効率的に進める必要がありました。国全体が一体となって大会を成功させるために、さまざまな施策を推進してきました。さらに、東京大会のレガシー(大会後の遺産)をいかに活かし、次世代に継承していくかを重要課題として取り組んでいます。」 文部科学省ウィキペディア

映像を終えたところで、インタビュアーが次の質問をしました。

インタビュアー
「そもそも、スポーツ庁設立の背景や、スポーツ基本法スポーツ振興法、そして1964年東京オリンピック2020年東京オリンピックがどのように関連しているのか、その経緯を教えていただけますか?」

以下、室伏長官の回答をまとめます。


1. 1964年東京オリンピックとスポーツ振興法の制定

  • 1964年10月開催・第18回夏季オリンピック(東京大会)
    日本が戦後初めて開催したオリンピック大会であり、戦後復興を象徴する大きな契機となりました。

  • 1961年(昭和36年)制定・スポーツ振興法(昭和36年法律第141号)
    この法律は、「スポーツを国民一般に広く普及させる」ため、国および地方公共団体の施策の基本を定めたものです。1964年の東京大会を見据えて、人々に一定の余暇が生まれ始めた時代背景の中で、スポーツを楽しむ機会を提供し、国民体育の振興を図ることを目的としていました。

ファクトチェック

  • 1964年東京オリンピックは、アジアで初めて夏季オリンピックを開催した大会です。

  • スポーツ振興法は1961年に制定され、スポーツ普及の法的枠組みを初めて定めたものでした。


2. 2011年制定・スポーツ基本法とその背景

  • 2011年(平成23年)制定・スポーツ基本法(平成23年法律第78号)
    1961年のスポーツ振興法を50年ぶりに全面改正し、スポーツの基本理念国・地方公共団体の責務スポーツ団体の役割と努力義務などを明文化しました。公文書上では2011年6月24日に公布、同年8月24日に施行されています。

  • 制定の背景

    • 1964年大会後の高度経済成長期を経て、スポーツを取り巻く社会環境が大きく変化したこと。

    • 大会開催から長い年月が経過し、スポーツを「生涯スポーツ」として捉え直す必要が生じたこと。

    • 公平性やクリーンスポーツを担保するためのアンチドーピング体制整備など、新たな課題が顕在化したこと。

ファクトチェック

  • スポーツ基本法の目的には「スポーツを通じて国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現」が明記されています。

  • アンチドーピングのルール整備は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)規範に準拠しながら進められてきました。


3. 2013年の東京2020大会決定とスポーツ庁設立

  • 2013年9月7日・IOCバルセロナ総会
    東京が2020年夏季オリンピックの開催都市に選出されました ウィキペディアオリンピック公式サイト

  • 2015年(平成27年)10月1日・スポーツ庁設置
    スポーツ基本法の精神に基づき、文部科学省の外局として「スポーツ庁」が発足。従来、省庁横断的に分散していたスポーツ施策を一元的に調整・推進する司令塔としての役割を担います。

ファクトチェック

  • スポーツ庁長官(Commissioner)は、2015年10月1日の設置時に第1代:鈴木大地(すずき だいち)長官が就任し、2020年10月1日より第2代:室伏広治(むろふし こうじ)長官が就任しています 文部科学省

  • IOCが東京を選出したのは2013年9月7日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた第125次IOC総会でした。


4. スポーツ基本法における理念と2020東京大会

  • 基本理念(スポーツ基本法 第2条)

    1. 「スポーツを通じて国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現」

    2. 「すべての国民がスポーツを行う機会の確保」

    3. 「スポーツを通じた地域活性化、経済活性化」

    4. 「健康長寿社会の実現」 文部科学省

  • 2020東京大会への期待

    • 大会の開催を契機に、生涯スポーツ健康長寿を支える仕組みづくりを強化。

    • 障がい者スポーツを含む「スポーツバリアフリー」の推進。

    • 大会後の「レガシー」をいかに次世代に残すかが重要な視点となっている。

ファクトチェック

  • 障がい者スポーツの一体的推進は、パラリンピックを視野に入れた取り組みとして、文部科学省や地方自治体と連携して行われています。

  • 東京2020大会後、「スポーツ文化の継承」「国際的スポーツ人材育成」「インクルーシブスポーツ社会」などがレガシー施策の柱とされました。


5. まとめ

  • 1961年:スポーツ振興法制定(昭和36年) ⇒ 初の体系的スポーツ振興政策

  • 1964年:東京オリンピック ⇒ 戦後復興を象徴し、スポーツ普及の原動力に

  • 2011年:スポーツ基本法制定(平成23年) ⇒ 「生涯スポーツ」や「アンチドーピング」など現代的課題を明文化

  • 2013年:東京2020大会決定 ⇒ 大会準備のための一体的施策強化

  • 2015年:スポーツ庁設置(平成27年) ⇒ 省庁横断的政策推進の司令塔誕生

  • 2020年:東京オリンピック・パラリンピック開催(開催実際はCOVID-19の影響で2021年に延期) ウィキペディアThe Guardian


【図表1 スポーツ法制とオリンピック開催年の時系列】

1961年──スポーツ振興法制定
   ↓
1964年──東京オリンピック(第18回夏季)
   ↓
2011年──スポーツ基本法制定
   ↓
2013年──IOCが東京を2020大会開催地に選出
   ↓
2015年──スポーツ庁設置
   ↓
2020年(実開催2021年)──東京オリンピック・パラリンピック