F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

肥満者のOGTTでみるインスリン抵抗性(健康長寿のためのスポートロジー第5回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

それでは、インスリンが効きにくい状態、すなわち肥満者にみられるインスリン抵抗性を、実際の仮想測定データで確認してみましょう。

 

図6 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)における血糖値・インスリン分泌の比較

  • 被験者

    • 正常群(非肥満・非糖尿病)

    • 肥満群(BMI≧30 未満、インスリン抵抗性を呈するが糖尿病未満)

  • 方法:朝食前空腹時に75 g ブドウ糖水を服用後、血糖値および血漿インスリン濃度を0、30、60、120分で測定。

時間(分) 正常群血糖値(mg/dL) 肥満群血糖値(mg/dL) 正常群インスリン(μU/mL) 肥満群インスリン(μU/mL)
0 70 70 5 5
30 140 180 30 80
60 155 200 50 120
120 80 160 10 60

 

  • 正常群では、糖負荷後30~60分で血糖値がピーク(約140–155 mg/dL)となり、2時間後にはほぼ空腹時水準(約80 mg/dL)に回復します。インスリン分泌も30分ピーク後に速やかに低下し、血糖を効率的に制御しています。

  • 肥満群では、同様の負荷後にも血糖値が200 mg/dL前後まで上昇し、2時間後も160 mg/dLと高値を維持します。インスリン分泌は正常群より数倍に増大しているにもかかわらず血糖が下がらないのは、受容体やシグナル伝達の感受性が低下し、インスリンが効きにくい(抵抗性)状態にあるためです。

このデータから、肥満に伴う内臓脂肪蓄積がインスリン抵抗性を引き起こし、高血糖を招いていることが明確に示されます。体重を減らすとインスリン分泌量は低下し、インスリン感受性が改善することも多くの研究で確認されています。