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3ヶ月減量でインスリン抵抗性改善(健康長寿のためのスポートロジー第5回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

それでは、肥満者が減量すると代謝はどのように改善するのかの研究をご紹介します。


対象と方法

  • 対象:BMI ≥ 30 の男性肥満症被験者 13 名

  • 減量介入:3 か月間の食事療法(理想体重あたり 35 kcal/kg/日)

  • 評価項目(介入前後に比較)

    1. ^1H-MRS による筋間・筋内脂肪量測定

    2. グルコースクランプ法による肝臓・筋肉のインスリン感受性評価

    3. 75 g OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)による血糖・インスリン動態


ベースラインの特徴

  • 摂取エネルギー:約 2,700 kcal/日

  • 体重:約 100.0 kg(BMI 32.5、腹囲 105 cm)

  • 中性脂肪:170 mg/dL(基準 150 mg/dL 以下)

  • 血圧:高値傾向


3 か月介入後の主な変化

指標 介入前 介入後 変化
体重 100.0 kg 93.8 kg −6.2 kg
BMI 32.5 30.5 −2.0
腹囲 105 cm 100 cm −5 cm
中性脂肪 170 mg/dL 140 mg/dL 正常域に接近
収縮期血圧/拡張期血圧 高値傾向 降下

75 g OGTT とインスリン動態の変化

血糖値:介入前 → 介入後 でわずかに低下
インスリン分泌:大幅に低下
 
  • 減量後は 同量のブドウ糖負荷に対し、はるかに少ないインスリン分泌 で血糖値を制御

  • これは インスリン抵抗性の著明な改善 を示唆します


考察

  1. 内臓脂肪・異所性脂肪の減少 により、FFA スピルオーバーや筋内・肝内脂肪蓄積が抑制された

  2. インスリンシグナル伝達の回復 に伴い、グルコースクランプ法でも感受性が改善

  3. 軽度の減量(体重−6 kg)でも、インスリン抵抗性は大きく改善 し、心血管リスクマーカーも好転

以上より、BMI 30 前後の重度肥満者においても、3 か月の適切な食事介入でインスリン抵抗性が顕著に改善し、メタボリックシンドロームや心血管疾患リスクの軽減が期待できることが明らかになりました。