ーーーー講義録始めーーーー
歴史を振り返ると、アルコール飲料を楽しむ習慣は人類の歩みとともに非常に古くから存在しています。ギリシャ神話や旧約聖書には酒や醸造技術に関する記述が見られます。また、日本の『古事記』にもたびたび酒宴が登場します。たとえば、天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れた際、八百万(やおよろず)の神々が高天原(たかまがはら)で大宴会を開いて彼女を誘い出したという故事があります。さらに、須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治する際には、八つの酒樽を用意して大蛇を酔わせ、その油断に乗じて討ったと伝えられています。
当初、酒は貴重品であり、経済的に余裕のある者しか大量に飲むことはできませんでした。しかし、醸造技術の発達と生産力の向上により、廉価なアルコール飲料が大量生産されるようになると、一般庶民にも手が届くものとなり、飲酒文化は広く社会に浸透していきました。