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アルコール酩酊段階と急性中毒(精神疾患とその治療第10回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

アルコールの急性効果と中枢神経抑制の進行

アルコール(エタノール)の急性効果は「酔う」状態として知られます。エタノールは脳内でGABAA_A受容体を介する抑制性伝達を強め、神経活動を抑制します。そのため本来「抑制的」な物質ですが、飲酒初期には「脱抑制」によって一見気分が高揚し、社交的になることがあります。

図10-1 酩酊段階と中枢神経への抑制作用の進行

段階 主な抑制部位 特徴的症状
ほろ酔い 大脳新皮質 判断力低下、リラックス、社交性増大
酩酊(中等度) 大脳辺縁系・小脳 感情表出の亢進、反復語、協調運動障害(千鳥足)
泥酔 大脳基底核・延髄 意識混濁、嘔吐、誤嚥リスク
昏睡 脳幹(呼吸中枢等) 痛覚反応消失、呼吸・循環抑制、昏睡
  1. ほろ酔い期

    • 抑制部位:大脳新皮質(理性や判断を司る部位)

    • 症状:理性的な抑制が弱まり、緊張緩和や社交性増大が見られる。

  2. 中等度酩酊期

    • 抑制部位:大脳辺縁系(情動や本能をつかさどる部位)、小脳(運動調節)

    • 症状:感情表出が過度に活発化し、同じ話を繰り返す、他者に絡む。小脳抑制で言語障害(呂律困難)、協調運動障害(千鳥足)が生じる。

  3. 泥酔期

    • 抑制部位:大脳基底核および延髄

    • 症状:意識混濁、嘔吐(アセトアルデヒドの作用)、嘔吐物誤嚥による窒息リスク。見守りが必要な危険水準。

  4. 昏睡期

    • 抑制部位:脳幹(呼吸・心拍・体温調節中枢)

    • 症状:痛み刺激に反応せず、呼吸抑制から生命維持機能停止に至る危険がある。即時の救急対応が必要。


注意喚起

  • 一気飲みや飲みたくない人への飲酒強制は、急性アルコール中毒やハラスメント(アルコールハラスメント)につながり、重大な人権侵害です。

  • 毎年、春の歓迎会シーズンには急性中毒のニュースが報じられます。適量・適切な飲酒マナーと、酩酊段階の理解に基づく配慮を徹底してください。