ーーーー講義録始めーーーー
聴講していて痛感したのは、地名問題は「たかが名前」では済まないということです。孫崎享先生は駐イラン大使として何度も体験されたそうですが、私もイラン、クウェート、アラブ首長国連邦などを訪れる中で、湾の名称問題に直面しました。イラン側は「Persian Gulf(ペルシャ湾)」を、アラブ側は「Arabian Gulf(アラビア湾)」を強く主張し、クウェートでは「Arabian Gulf」と言っただけで叱責されるほどです。論文や公式文書では必ず“Persian Gulf”と表記しなければ、イランの関係者から抗議が来るほどのこだわりがあります。
こうした地名はアイデンティティと結び付き、やがて領有権や主権の主張に直結します。日本海の呼称問題(Sea of Japan vs. East Sea)や、竹島(韓国名:独島)の領有権問題も同様で、国内政治に利用される局面で特に注目が集まります。
