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武力紛争法の三原則と規制(国際法第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

武力紛争法(国際人道法)は、「軍事的必要性」と「人道的考慮」のバランスを前提に、区別・比例・予防の三大原則のもと、戦闘の手段・方法を規制しています。

  1. ハーグ法とジュネーヴ法、追加議定書の関係

    • ハーグ法(戦闘の手段・方法規制)は、軍事的必要性を重視しつつも、マルテンス条項※による人道的保護の趣旨を内包しています。

    • ジュネーヴ法(人道的保護規定)は、戦傷者や文民(civilian)の保護を中心に規定します。

    • 1977年追加議定書第一議定書(国際的武力紛争に関する議定書)は、ハーグ法の内容を発展・補完しつつ、ジュネーヴ法の保護規定も一層強化しました。

    • 1977年追加議定書第二議定書(非国際的武力紛争に関する議定書)は、領域の一部を実効支配する組織的武装集団間の紛争にも適用範囲を詳細化しています。

    • これら条約・議定書の規定は慣習国際法としても確立しており、宣戦布告の有無や交戦当事者の法的地位にかかわらず、すべての交戦当事者に適用されます。

  2. 三大原則

    1. 区別の原則(Distinction)

      • 戦闘員と非戦闘員(civilian)、軍事目標と非軍事目標を明確に区別し、攻撃対象を軍事目標に限定する義務。

    2. 比例の原則(Proportionality)

      • 予期される具体的かつ直接的な軍事的利益と比較して、過度の civilian の死傷または民用物の損害(excessive civilian harm or damage)を避ける義務。

    3. 予防の原則(Precaution)

      • 攻撃実行前に可能な限り配慮・措置を講じて civilian への被害を最小限に抑える義務。

  3. 戦闘の手段・方法規制の方法

    • 具体的規制:化学兵器禁止条約、対人地雷禁止条約など、特定兵器を列挙して禁止・制限する方式。

    • 抽象的規制:マルテンス条項や1977年議定書共通原則に基づき、「不要な苦痛を与える兵器」や「過度の被害をもたらす兵器」を禁止する方式。

    • 具体的規制と抽象的規制を組み合わせることで、新兵器開発と法の抜け穴が生じる規制の空白を防ぐ役割を果たしています。


※マルテンス条項:1899年ハーグ条約前文に規定され、「慣習、国際慣習及び文明化された国民の良心の精神に照らし、当該条約に記載のない事柄については同様の基準を適用すべき」とする原則。