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武力紛争法の戦闘方法規制(国際法第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

次に、戦闘方法の規制について整理します。

  1. 区別の原則(Distinction)

    • 攻撃対象は「軍事目標(military objectives)」のみに限定し、「文民(civilian)」や「民用物(civilian objects)」を区別する義務です。

    • 直接参加(direct participation)しない文民は攻撃から保護されます。

  2. 歴史的経緯:防守都市と無防備都市

    • 1907年ハーグ第IV条約「陸戦の法規慣例に関する条約」規則第25条は、「防守されざる都市、村落、住宅又は建物(無防備都市)を攻撃・砲撃してはならない」と定め、防守都市と無防備都市を区別しました。

  3. 国内判例(下田事件判決)

    • 昭和38年(1963年)12月7日東京地裁は、米軍による広島・長崎への原爆投下を「国際法違反」と認定しました。ただし「無差別爆撃」という語は使用されず、国家無答責論により損害賠償請求は棄却されています。

  4. 1977年追加議定書第一議定書(AP I)の規定

    • 第48条(Distinction):攻撃対象を軍事目標に限定。

    • 第51条第4項(Prohibition of Indiscriminate Attacks):無差別攻撃を禁止。

    • 第52条第2項(Definition of Military Objectives):軍事目標を「実質的に軍事的利益を提供し、かつ攻撃によってその性質・場所・目的が妨害される目標」と定義。

    • 第57条(Precautions):攻撃前・攻撃中に文民被害を最小化するための予防措置(Precaution)の義務を規定。

  5. 比例の原則(Proportionality)

    • 予期される具体的かつ直接的な軍事的利益と比較し、「過度の文民の死傷又は民用物の損害(excessive civilian harm or damage)」を避けなければなりません。

  6. 付随的損害(Collateral Damage)

    • 正当な軍事目標への攻撃で生じる文民・民用物被害を指し、比例の原則および予防の義務によって制限されます。

  7. 現代的展開:新たな作戦領域

    • 従来の陸・海・空に加え、宇宙・サイバー領域での作戦が想定されています。既存の国際人道法の諸原則は原則として適用されますが、具体的には『タリン・マニュアル』等による学術的検討が進行中です。

  8. 慣習国際法としての確立

    • 区別・比例・予防の三原則や無差別攻撃禁止は、条約法のみならず慣習国際法としても確立しています。

以上のように、武力紛争法は歴史的条約の枠組みを基礎に、AP Iで明文化された原則を中心に、付随的損害や新たな作戦領域にも対応しつつ、文民保護と軍事的必要性の均衡を図る体系として進化しています。