思えば教師は色々な業務が増えてブラック職場と化しているのが現状である。
ーーーー講義録始めーーーー
講義では、学校教育に関わる諸問題について、法と教育の学際的視点から論じてきました。
残された課題として、権利調整型の学校運営・教育実践を推進する上で不可欠な「3つのM」と「GRC」に触れておきます。
1. 学校教育に対する法の越境
従来、教育の論理で運営されてきた学校現場に法的規制が本格的に入り込む中で、学校や教員への負荷が限界に近づいている状況があります。
たとえば、
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いじめ防止対策推進法の制定
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障害者差別解消法に基づく合理的配慮の義務化
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個人情報保護法における「要配慮個人情報」カテゴリーの新設
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「主体的・対話的で深い学び」を基調とする新しい学習指導要領への対応
これらは教育の質向上に大きく寄与する一方で、学校・教員が直面する新たな課題を急速に増加させています。
2. 「働き方改革」との並行実施の問題
同時に、学校の「ブラック化」が社会問題化し、働き方改革の実現も急務となっています。しかし、新たな法的課題への対応と働き方改革を同時に進めるための制度的・物的ツールは十分とは言えません。本来、これらを両立させるには相応の労力・時間・人員の確保が不可欠です。
3. 「3つのM」の不足
企業経営の分野では、新規事業や新分野への挑戦に必要な資源として「3つのM」—Man(人員), Material(資材・物的資源), Money(資金)—が不可欠とされます。
しかし、学校現場にこれらが十分投入されているとは言い難く、むしろ教員定数削減の議論や、特別支援教育に関する就学指定変更など、負担を増やす方向の動きが見られます。新たな課題対応の一定部分は、教員の献身的努力やボランティア的労力に依存しているのが現状です。
4. 負荷増大によるリスク
3つのMを欠いたまま業務を拡張することは、現場負荷を増大させ、いずれ制度や運営の破綻を招く可能性があります。
例えば、いじめ防止対策推進法では広範な定義の下、全事案について事実関係調査と報告が求められますが、限られた教員数で他の業務と並行して行うことは極めて困難です。この現実を軽視することは、労働安全衛生の観点から見ても、重大なコンプライアンス違反に該当し得ます。
