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認知行動療法における「行動」の定義と死人テスト #放送大学講義録(認知行動療法第2回)

 ーーーー講義録始めーーーー

 

はじめに

皆さんこんにちは。本日は、行動と認知の科学が心の問題の解決にどのように役立つのかを解説します。
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)では、「行動」という言葉を日常的な意味よりも狭く、かつ具体的に定義して用います。この理解は治療における重要な鍵となります。


死人テスト(Dead Man Test)とは

行動分析学者オグデン・リンズリー(Ogden Lindsley, 1965)が提唱した概念で、「死人にもできることは行動ではない」という基準で行動を定義します。

例1: 「どっこいしょ」と言いながら椅子に座る

  • 椅子に座ることは死んだ人形(マネキン)にはできません。

  • よって、これは「行動」と定義されます。

例2: 「スマートフォンを操作しない」

  • 操作しないことは、マネキンにもできます。

  • したがって、これは行動の指示ではありません。

  • 子どもに「スマホをいじらないように」と注意する場合、代わりに「この本を3ページ読む」など具体的な代替行動を提示する方が効果的です。


感情や生理的反応は行動か

行動分析学の立場では、感情や思考も「私的事象(covert behavior)」として広義の行動に含めます。

  • 例:「こんなことを考えたら気持ちが沈んだ」

  • 例:「お腹が減ったら何か食べようと思った」
    これらは外部から直接観察できませんが、次の行動を引き起こす「刺激」としての役割も持ちます。
    ただし、この捉え方は行動分析学的アプローチ特有のもので、すべての心理療法で共通の定義ではありません。


私的事象と公的事象

CBTでは、行動を次の2つに分類して扱います:

  1. 公的事象(overt behavior):外部から観察可能な行動(例:歩く、話す、書く)

  2. 私的事象(covert behavior):思考、感情、生理的反応など内面で生じる出来事

この分類により、外から見える行動だけでなく、内面で起こる現象も治療の対象として取り上げられます。