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犯罪者治療における認知行動療法の実践 #放送大学講義録(認知行動療法第2回)

ーーーー講義録始めーーーー

 

1. 研究者紹介(事実の明示)

筑波大学の原田隆之教授は、犯罪心理学・認知行動療法・エビデンスに基づく臨床を専門とし、法務省法務専門官や国連Associate Expert等を歴任してきた臨床研究者です。関連著作として『入門 犯罪心理学』『痴漢外来』などがあります。

※本講義では、原田教授の領域に関連するCBTに基づく犯罪者処遇のエビデンスと実務枠組みを概説します。


2. 犯罪行為の背景理解(アセスメント視点)

反復的な性加害行為(例:痴漢・盗撮・露出等)には、

  • 引き金(トリガー)となる状況・刺激

  • 認知の歪み(容認・正当化・過小評価等)

  • 強化学習や習慣化に類する維持機序
    が関与し得ます。CBTは、これらを機能分析(R-R-R:リスク・ニーズ・レスポンシビティ原則に整合)で同定し、再犯リスクの低減を狙う介入ターゲットを明確化します。


3. 認知と行動の相互作用(介入標的の例)

認知の例:「腹が立ったら殴ってもよい」等の加害容認的思考は、行動の引き金になり得ます。CBTでは、認知再構成代替行動訓練を組み合わせ、高リスク状況の回避・対処(計画・自己監視・スキルトレーニング)を行います。これらはRNRに適合する行動的・認知行動的手続きが相対的に効果的であるという累積的エビデンスと整合します。


4. 治療の焦点(何に介入するか)

  • 行為そのものの叙述だけでなく、

  • 引き金—認知—情動—行動—結果機能連鎖の分析、

  • 自己コントロール方略(刺激統制、欲求の遅延、衝動対処、問題解決、リラプス・プリベンション)
    を中核に据えます。性犯罪者プログラムは認知行動療法に基づき策定・運用されています(日本の保護観察・刑事施設を含む)。


5. 概念枠組みの注意(「依存症」表現の整理)

反復的な性的問題行動を**一律に「依存症」**とみなすのは不正確です。

  • ICD-11強迫的性行動症(CSBD)を衝動制御障害として分類。

  • DSM-5-TRは、行為特性に応じてパラフィリア(性嗜好)関連障害(例:露出症、窃視症、接触(擦りつけ)障害 等)を規定。
    個別例ではどの診断枠組みにも該当しない場合もあり、臨床判断と法的評価を統合する必要があります。


6. 神経・生物学的所見と治療

反復的な性的問題行動には神経生物学的要因が関与し得ますが、標準臨床では**心理社会的介入(CBT)を基盤とし、必要に応じて薬物療法(例:SSRI、抗アンドロゲン〔GnRHアゴニスト等〕)**を補助的に用いることが国際ガイドラインで整理されています。従って「脳を直接治療できない」という断定は不適切で、統合的治療が推奨されます。


7. 再犯防止のエビデンス

CBT系およびRNR原則に適合したプログラムは、再犯率低下に資することを示すメタ分析政策レビューが蓄積しています。

  • Hansonら、Lösel & Schmuckerらの統合レビュー/メタ分析

  • 近年のCBT系プログラムのメタ分析(性・一般再犯)

  • 公的機関によるRNR遵守プログラムの有効性レビュー
    これらは**「罰のみ」よりも「治療+監督」**の併用が再犯抑止に有利であることを示唆します。


8. 社会的意義

本アプローチの目的は加害者の擁護ではなく、被害の予防公共の安全です。日本の公的プログラムもCBTに基づく実施体制を整備しており、再犯防止政策の一環として位置づけられます。