ーーーー講義録始めーーーー
1990年代の理論的発展
岡村理論を基盤として、1990年代には新たな理論的展開が見られました。右田紀久恵による自治型地域福祉論と、大橋謙策による主体形成型地域福祉論です。
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自治型地域福祉論
住民の内発性と住民自治の視点を強調し、行政依存ではなく住民自身が主体となって福祉の公共性を担うことを重視しました。 -
主体形成型地域福祉論
生活課題を抱える人々を地域社会から排除せず、本人の主体的参加を通じて自立生活を支援し、住民自身が主体的に課題解決に関わることの重要性を説きました。
地域福祉の重層的発展
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1960〜1970年代
アメリカやイギリスの実践・政策の影響を受けつつ、社会福祉協議会を中心に地域の組織化が進みました。小地域単位での「小地域福祉活動」が展開され、当事者団体の形成も進みました。この時期に岡村重夫の地域福祉論が登場し、自治体福祉政策や社会福祉協議会の住民活動に大きな影響を与えました。 -
1980年代
日本では「在宅福祉」が政策として推進されましたが、地域福祉との峻別が曖昧となり、両者が混同される傾向がありました。なお、イギリスでは1990年のNHS&Community Care Actを契機にコミュニティケア改革が進められ、日本の政策にも影響を与えました。 -
1990年代前半
高齢化の進行とともに高齢者介護を中心としたボランティア活動が広がり、住民参加型福祉が議論されるようになりました。 -
1994年 老人保健福祉計画
当時の全国約3,400市町村すべてが策定に取り組み、地域に暮らす高齢者の生活実態調査を実施しました。その上で介護サービス整備の目標を設定し、さらに市町村の各分野の福祉計画策定委員会に地域住民が委員として参加する仕組みが導入されました。これにより、住民参加の制度化が大きく進展しました。
