ーーーー講義録始めーーーー
環境適応を重視するオープンシステムアプローチ
1980年代以降、環境への適応を重視するオープンシステム・アプローチが注目されるようになりました。第二次世界大戦後に続いた冷戦構造は1980年代後半に終焉を迎え、1990年代には激しく変動する社会の中で、いかに持続可能な組織経営を行うかが重要な課題となったのです。
KatzとKahnは『The Social Psychology of Organizations(組織の社会心理学)』を著し、とくに1978年刊行の第2版において、組織を環境に開かれたオープンシステムとして捉える視点を提示しました。この考え方は大きな影響を与え、組織は環境に適応し変革していく存在として理解されるようになりました。
同時期には、複雑系科学が台頭しました。これは、部分が集まって全体が構成されると、部分にはない全体固有の性質(創発特性)が生じることに着目するものでした。その影響もあり、組織文化や風土といったメンバー間の相互作用から生まれる全体的特性への関心も高まりました。
学習する組織論
オープンシステム・アプローチは組織を環境に適応する存在として理解しましたが、1990年代以降は単なる受け身の適応にとどまらず、経験から学習し自律的に成長する存在として組織を捉える視点が台頭しました。これはピーター・センゲが1990年に著した『The Fifth Discipline(邦訳:学習する組織)』で広く知られるようになり、世界中で注目を集めました。
現代の組織心理学の意義
かつては機械の部品のように捉えられていた組織の成員は、現代では変動する社会において組織と共に学習し、適応し、チームで成果を生み出す存在として期待されています。行動科学、特に心理学の視点を活かした産業・組織心理学の知識は、効率性と生産性を高める人材・チームの育成、安全かつ健康に働ける職場環境の整備、さらには製品やサービスを社会に受け入れられる形で提供するために不可欠です。
多くの人が学校教育を終えた後には組織に所属したり経営に携わったりしながら長期にわたり働くことになります。私たちが充実した職業生活を送り、組織経営を効果的なものとするために、産業・組織心理学の学びはきわめて重要な視点を提供するのです。


