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PTSD(心的外傷後ストレス障害)の実態と影響 #放送大学講義録(レジリエンスの科学第2回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

PTSDの定義と発症率

心的外傷後ストレス反応(Post-Traumatic Stress Reaction: PTSR)や心的外傷後ストレス症状(Post-Traumatic Stress Symptoms: PTSS)の症状が長期にわたって持続する場合には、心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder: PTSD)に至り、適切な治療を必要とすることがあります。

PTSDの発症は特別に珍しいものではありません。海外のレビュー研究によると、PTSDの発症率は以下のように報告されています:

  • 災害の被害に直接遭った被災者:30%〜40%

  • 直接被災していない支援者:10%〜20%

  • 被災と直接関連のない一般の人々:5%〜10%


東日本大震災におけるPTSDの実態

間接的な影響

東日本大震災では、直接被災していない地域に住む人々でも、ニュース映像を繰り返し視聴することでPTSD症状が生じたケースが多く報告されました。これにより、災害の「間接的な影響」にも注目が集まるようになりました。

関東地方での調査結果

震災から半年後、関東地方の自治体職員を対象に行われた調査では、PTSDに該当する症状を示す人、あるいは診断基準には満たないが類似の症状が続く人が約20%存在することが明らかになりました。特に震災で身体的な怪我を負った人では、その割合は30%以上に上昇していました。身体的ダメージが大きいほどPTSD発症率が高くなることは、多くの研究で一貫して報告されています。

福島県での長期調査

2013年2月、福島県で原発事故により避難指示を受け、仮設住宅で暮らす住民を対象とした調査では、60%以上がPTSD症状を示していることが報告されました。避難生活が長期化し将来の見通しが立たない状況では、被災から約2年を経てもなお多くの人が強い影響を受け続けていたのです。


その他の災害・状況におけるPTSD

新型コロナウイルス・パンデミック

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、中国で行われた調査では、医療従事者の30%以上がPTSD症状を示していたと報告されています。ただし、時期や調査対象により数値は変動します。


PTSDの発症リスク要因

PTSDの発症リスクを高める要因として、以下が知られています:

  • 生命の危険を脅かすほどの身体的ダメージ

  • 破壊されたものの規模の大きさ

  • 情報の不確実性(原発事故など)

  • 長期にわたる恐怖状況の継続(パンデミックなど)

原発事故や感染症の流行のように、情報が不確かであったり恐怖が長期に続く状況は、リスクを一層高めると考えられます。


PTSDから心を守る力

こうした強い衝撃によるストレス反応から心を守り、影響を和らげようとする現象が、レジリエンスのV字モデルにおける**左側(急激な落下をしない力)**に相当します。この点については次回詳しく説明します。

 

PTSDの発症率比較(災害・支援者・一般人)

  • 被災者:30〜40%

  • 支援者:10〜20%

  • 一般人:5〜10%

赤色の棒グラフで範囲(最小値〜最大値)を示し、上に数値ラベルを付けています。

 

PTSD症状割合の比較

  • 東日本大震災(自治体職員):約20%

  • 福島避難者(仮設住宅):60%以上

  • COVID-19医療従事者:30%以上

災害・事故・パンデミックといった状況ごとに、PTSD症状の発症割合が大きく異なることを視覚的に示しています。