ーーーー講義録始めーーーー
レジリエンスの科学「レジリエンスの発達」
これまでのシリーズでは、回復力としてのレジリエンスが時期によって異なる方向性の力を必要とすること、そのプロセスや個人の持つレジリエンシー(resiliency:個人特性としてのレジリエンス)には量的にも質的にも個人差があることを学びました。
では、ストレス状況に対応する適応力は年齢とともにどのように変化していくのでしょうか。また、他者との関わりの中でその力はどのように変化していくのでしょうか。本講義では、近年注目されるレジリエンス教育や予防的心理支援を紹介しつつ、その変化の可能性を考えます。
本日の講義内容
-
パーソナリティの発達的変化:個人のレジリエンスに影響するパーソナリティ(性格・特性)が年齢とともにどのように変化するか。
-
ライフステージによる変化:子ども、青年、成人、高齢期におけるレジリエンスの発達。
-
教育的介入による変化:自然な発達だけでなく、教育や支援によってレジリエンスがどのように促進されるか。
レジリエンシーとパーソナリティ
ストレスフルな出来事に直面すると誰もが何らかの反応を示しますが、その回復速度や適応度には個人差があります。スムーズに回復しやすい特性をレジリエンシーと呼びます。これは能力やスキル、傾向などで構成され、パーソナリティの一部と位置づけられます。
ビッグファイブ・パーソナリティ
人のパーソナリティを包括的に理解する枠組みにビッグファイブ理論があります。これは以下の5特性から構成されます:
-
神経症傾向(Neuroticism):情緒不安定性。心配性、ストレスへの敏感さ。
-
外向性(Extraversion):社交性、活動性、エネルギッシュさ。
-
開放性(Openness):新しい体験や知識への柔軟性。
-
協調性(Agreeableness):他者への思いやり、協力性。
-
誠実性(Conscientiousness):責任感、計画性、勤勉さ。
近年では、第6因子「誠実-謙虚性(Honesty-Humility)」を加えたHEXACOモデルも提唱されています。
パーソナリティの成熟原則
研究(McCrae & Costa, 2003; Roberts et al., 2006)によれば、加齢に伴って人のパーソナリティは適応的な方向に変化します。
-
神経症傾向:低下する傾向
-
誠実性・協調性:上昇する傾向
-
外向性・開放性:青年期以降は比較的安定または緩やかに増加
ただし、思春期には一時的に神経症傾向が高まり、情緒不安定さが増すことも報告されています。
レジリエンスとビッグファイブの関係
メタ分析(Oshio, Taku, Hirano, & Saeed, 2018)によると、レジリエンスはビッグファイブの各特性と広く関連していることが示されています。特に神経症傾向の低さと、外向性・協調性・誠実性の高さが強く関連することが確認されています。
レジリエンシーの発達的変化
以上の知見から、レジリエンシーもまたパーソナリティと同様に発達的に変化し、加齢とともにより適応的な方向へと発展する傾向があると考えられます。次回は、パーソナリティの中で変化しやすい要素と変化しにくい要素を具体的に検討していきます。

