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労働時間規制の目的と歴史的展開 #放送大学講義録(雇用社会と法第6回その1)

ーーーー講義録始めーーーー

 

はじめに

雇用社会と法第6回は「長時間労働の是正と自律的な働き方」です。労働基準法は、労働時間の原則を1日8時間、週40時間と定めています。しかし、我が国では長時間労働の是正が十分に進まず、その実態が長く続いてきました。長時間労働は、労働者の健康の確保を困難にするだけでなく、仕事と家庭生活の両立を妨げ、少子化や女性のキャリア形成の阻害要因となるなど、さまざまな社会的弊害をもたらしています。

今回は、労働時間に関する法規制の基本を確認しつつ、長時間労働の是正と自律的な働き方の推進をめぐる法律的課題について考えていきます。


学習のポイント

第6回で学んでほしいのは、次の3点です。

第1に、労働時間政策と法の役割です。
2018年6月29日に働き方改革関連法が成立しました。労働時間はなぜ法によって規制される必要があるのでしょうか。また、なぜ法改正が求められたのでしょうか。労働時間政策の歴史的展開と法の役割について確認します。

第2に、労働時間の法規制です。
労働基準法第32条により、1日8時間、週40時間が原則とされています。2019年4月施行の改正により、時間外労働の上限が法的に明確化されました。どのようなルールが定められているのか、具体的に見ていきましょう。

第3に、労働時間法制の課題です。
テレワーク、フレックスタイム制、裁量労働制など多様な働き方が広がる中で、労働時間規制にも柔軟性と自律性を両立させる仕組みが求められています。どのような問題が残されているのか、考察していきましょう。


考えてほしい問いかけ

今回、皆さんに考えてほしいのは、「労働時間を短くする政策は今も必要か」という点です。労働時間をさらに短縮する政策を進めるべきか、それとも多様な働き方の選択を重視すべきか。どのようにすれば健康で持続可能な働き方が可能になるのか、皆さん自身の視点で考えてみてください。


労働時間規制の歴史的展開

労働時間規制は、19世紀にイギリスや欧米諸国で始まりました。当初は年少者や女性を保護する目的で、労働時間・休日・深夜労働に関する規制が導入されました。

例えば、イギリスでは1833年に**工場法(Factory Act)が制定され、9歳未満の児童の就労を禁止し、年少者の労働時間を制限しました。アメリカでは1938年に公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)**が制定され、最低賃金とともに週労働時間の上限を規定しました。

日本でも1911年に工場法が制定され、女性および年少者を対象とする労働時間・休日・深夜業の制限が設けられました。その後、労働者一般を対象とした包括的な労働時間規制が整備されます。

1947年(昭和22年)制定の労働基準法は、国際労働機関(ILO)第1号条約(1919年採択、1日8時間・週48時間原則)を踏まえ、労働者全体に適用される労働時間の原則を定めました。その後、1987年の改正により週40時間制が段階的に導入され、2019年には時間外労働の上限規制が法定化されるなど、労働時間政策は「過労死防止」と「ワーク・ライフ・バランス推進」を両輪として進化を続けています。