ーーーー講義録始めーーーー
運動がもたらす効果
高齢期における運動のもたらす効果ということも少しお話ししたいと思います。研究によれば、運動は老化の進行を遅らせる数少ない方法と言われています。運動は脳の衰えを防ぐだけではなく、老化に伴う細胞の衰えを逆行させるとも言われています。
定期的に運動することは、心臓血管系の機能改善とともに脳への血流を増大させ、脳の処理速度、記憶力の向上や推理力を高め、そしてさらに免疫機能を高め病気にかかりにくくするとも言われます。
運動は早く始めるに越したことはないわけですが、ほとんどの場合遅すぎることはなく、トレーニングによって運動能力を著しく向上させることができると言われています。
別府:「私も66歳からマラソンを始めましたけれども、一人で続けるのは非常に難しいので、年の近い人と一緒に定期的に走っています。私たちの自慢は全員がホノルルマラソンを完走したんですよ。運動の効果は非常に大きくて、80歳の方でも年に1回以上大会に出ています。高齢者が長く続けるためには他人と競わないということが私は大事かなと思いますね。走っていて追い越されることを気にするようでは長続きは無理ですね。」
岩崎:「ホノルルですか。何か観光やご当地グルメを楽しむのも良さそうですね。運動を習慣づけるということが大事だというお話かと思います。」
認知能力低下のリスクを軽減するには
この他、高齢期における認知能力低下のリスクを軽減することとしては、例えば:
- 生活習慣病がないこと
- 良好な環境で生活し、社会活動に参加していること
- 認知処理スピードの維持
- 認知水準の高い配偶者がいること
- 自分の人生に満足していること
などが挙げられています。
活動的で知的な人生を維持している健康な人は、80歳以降になっても知的な力をほとんど、あるいは全く失わないと言われています。
別府:「本当にそうだと嬉しいですよね。高齢期の運動は若い時以上に大事だと思いますね。またこの時期は身体と精神の関係が非常に密接になってきます。積極的に運動している方もたくさんいらっしゃいます。要はですね、老いていく自分の現在をどこまで受け入れられるか、つまり自己受容の問題かなと思います。」
生き生きと学習されている方の例
岩崎:「そうですか。自分をどこまで受け入れられるかということが大事なんでしょうね。それでは、生き生きと学習されている方の例をご紹介いただけますか。」
別府:「はい、ご紹介したいと思います。実は私がデイケアでお会いした頃、その方は76歳の女性なんですが、脳梗塞で軽い麻痺が半身にあるわけですね。ところがですね、その方は70歳過ぎてロシア語を学び始めるわけなんですよ。実はその理由がですね、テレビで見たバイカル湖の水の美しさに魅かれて、絶対にロシアに行くんだと決めたということなんですね。」
「ロシア語の講座の時間にはですね、どこに行っていても必ず帰宅してテレビの前でノートを取っていました。学習ノートを見せてもらったんですが、非常にたくさん、山のような量で本当にびっくりしましたね。やがてそのデイケアで知り合ったボランティアの女性に同行していただいてロシア行きの夢が叶うわけなんですね。もちろんバイカル湖の美しさに感動したわけですけども、実は近くの村の教会で大歓迎を受けるわけなんですね。そのことに非常に感動して帰っていらっしゃいました。後日、教会であったそのロシアの方がですね、日本に彼女を訪ねてこられたそうです。」
岩崎:「そうですか。高齢になっても国際交流もできるんですね。」
別府:「そうですね。実は私も定年後ですね、仕事と全く関係ない蕎麦打ちを習い始めました。その蕎麦打ち教室でですね、元商社マンだった男性と一緒にですね、うつ病の人と蕎麦を打つ会というのを始めることになりました。その方は定年後、蕎麦の文化に非常に惹かれて、腰が痛いとかですね、腕が痛いとか言いながらも、オーストラリアやブータン、中国などで得意の蕎麦打ちを披露していますよ。学習によって活動が広められているのがとても気になりますね。」
岩崎:「そうですよね。学習を楽しみ社会に働きかけることが人生に満足するということにつながるのかもしれませんね。」
別府:「そうですね。学習は社会とつながるツールだと思います。」
岩崎:「なるほど。学習は社会と楽しくつながることのできるツールということですね。ぜひ皆さんも何がやりたいかを考えてみてください。」
