ーーーー講義録始めーーーー
皆さんこんにちは。第6回のテーマは「学習資源としての経験」です。今回はキャリア心理学、キャリアガイダンスを専門にされている労働政策研究・研修機構(JILPT)統括研究員の下村英雄さんをゲストにお迎えします。下村さんとは、以前にキャリア形成の実態を調査する研究プロジェクトでご一緒したことがあります。本日はその調査研究の一端も紹介しながら、学習における経験の意義について考えてみたいと思います。下村さん、どうぞよろしくお願いいたします。
皆さんこんにちは。下村です。よろしくお願いします。
アメリカの成人教育の創始者の一人とされる E.C. リンデマン(Eduard C. Lindeman, 1885–1953) は、『The Meaning of Adult Education』(1926)において「成人教育における最高の資源は学習者の経験である(The resource of highest value in adult education is the learner’s experience.)」と述べ、さらに「経験は成人学習者の生きた教科書である(Experience is the adult learner’s living textbook.)」とも述べています。これは、成人学習が生活上の問題や課題(life situations)を起点として展開されるという Lindeman の基本的立場を示すものです。
このように成人学習における経験の意義を取り上げるにあたり、まず経験を人生の資本として捉える考え方を紹介したいと思います。ここでいう「資本としての経験」という考え方は、Pierre Bourdieu の文化資本・社会関係資本の概念や、Jack Mezirow の変容的学習論、Peter Jarvis の経験学習論とも関連するものです。ただし、これらは Lindeman の理論と直接同一の体系に属するわけではないため、成人学習における経験の価値を理解する際に参照可能な複数の枠組みとして位置づける必要があります。
■(必要であれば)経験学習モデル図(Kolb の経験学習サイクル)
具体的経験 (Concrete Experience)
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省察的観察 (Reflective Observation)
↓
概念化・理論化 (Abstract Conceptualization)
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実験・応用 (Active Experimentation)
↓(再び経験へ)
■引用・根拠文献
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Lindeman, E. C. (1926). The Meaning of Adult Education.
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Brookfield, S. (1986). Understanding and Facilitating Adult Learning.
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Mezirow, J. (1991). Transformative Dimensions of Adult Learning.
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Jarvis, P. (2006). Towards a Comprehensive Theory of Human Learning.
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Bourdieu, P. (1986). Forms of Capital.


