ーーーー講義録始めーーーー
さて、「資本」という言葉に皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。資本とは本来、商売や事業を行う際の元本として用いられるものという印象が強いですが、経済学では「将来の価値を生み出すために蓄積される要素」全般を指す概念としても広く用いられています。
このような資本の考え方を、社会的地位の獲得や再生産のメカニズムに適用したのが、フランスの社会学者ピエール・ブルデューです。ブルデューは、人々が社会の中で位置取りを行い、生き方や選択の幅を形づくる文化的な要素――例えば身体化された教養や言語能力、学歴資格、芸術的素養など――を「文化資本」と呼びました。
この文化資本の議論を参考にしますと、私たちが人生を通じて蓄積する「経験」もまた、現在や将来の生活のあり方に影響を与える資本的な性質をもつと言えます。ここでは、ブルデューの文化資本の枠組みになぞらえつつ、経験の蓄積を人生に役立つ資本として捉え、「経験資本」という概念として考えてみたいと思います。
そして、この経験資本の特徴をより明確にするため、ブルデューが提唱した文化資本とは何が同じで、何が異なるのかについて整理してみたいと思います。下村さんはどのようにお考えになりますか。
