ーーーー講義録始めーーーー
はじめに
皆さん、こんにちは。講師の岩崎久美子です。第5回のテーマは学習動機です。大人になってからも、私たちはなぜ学習活動を行うのか、その動機について、これまで行われてきた研究を紹介し、また学習活動に参加する促進要因や阻害要因について考えてみたいと思います。そして、学習を促す感情についても併せて取り上げようと思います。
今回は、教育評論家の小宮山博仁さんをゲストにお迎えしています。
小宮山博仁氏の紹介
小宮山さんは、大学生の時に近所の子どもを集めて塾を始めたのがきっかけで教育評論家になられました。小学校、中学校、高校それぞれの子どもを40年近く教えてこられました。そこで教えることを通して自分も様々なことを学び、生涯学習に関心を持つようになったというのはここ20年の流れだそうです。
小宮山さんは塾で小中学生を教えてこられた経験を踏まえて、どのように子どもの学力を伸ばすか、やる気の出る学習方法などに関しての多くの著作を書かれています。今回は、ご経験を通じて、子ども時代の学習への意欲や動機が、その後成人になってからの学習にどうつながるかといったお話を伺います。
森高千里「勉強の歌」が教えてくれること
まず最初に、森高千里さんの歌を紹介しましょう。この歌は、今回の放送教材用に勉強についての歌を探していて見つけたものです。この歌は森高さんがまだ20代の頃に作詞されたものですが、ご本人の気持ちを素直に、また実感を持って歌われています。
例えば、「勉強はできるうちにしておいた方がいいわ」というフレーズがあります。この歌を聞きますと、本当にその通り。勉強は自分の栄養になるものですから、もっと早く気づいてやっていれば、今頃はもっとどうにかなっていたかなと今更ながら思います。
このように子どもの頃は誰しもが勉強をあまりしたいと思わないものですが、小中学校時代の勉強は成人になってどのような影響があるのでしょうか。
生涯学習の出発点は小中学校
小宮山さんは、生涯学習の出発点は小中学生の学びにあるということを、子どもを教えていて実感されたそうです。特に義務教育の小学校で学ぶ内容というのは、人間が生きていく上で大切な知識がとてもたくさんあることを発見されました。
小学校で学ぶ算数や国語の知識があると、小学校、中学校、または高校と、どこかでドロップアウトする子が必ずいるのですが、小学生までの知識があれば、中学、高校でドロップアウトしたとしても、必ずやり直すことができたそうです。ところが、小学校時代の知識がないと、学びが続かない困難な子をたくさん見てこられました。
そういう意味で、小中学生で学校が面白いと思っている子どもは目が輝いていて、やはり学力も高い傾向があったという経験をされています。
抽象的思考がターニングポイント
では、成人になってから学びの面白さを知っている人、つまり人生を楽しむ学習ができるという人は、どのような小中学校時代を過ごしているのでしょうか。
小宮山さんが子どもたちを教えた経験から言うと、抽象的な思考ができるかどうかがターニングポイントだったそうです。
算数ならば、割合や速さ、例えば単位量あたりの量、あるいは分数といった概念を理解できるかどうかが問題でした。国語では、辞書を使いこなせるかどうかが、生涯にわたって学習できるかどうかの指標の1つになりました。わからない言葉を他の言葉で説明できるというのは、やはりある程度抽象的な思考ができないと難しいのです。
この算数と国語の抽象的な考え方をクリアしていると、様々なジャンルの本を読み出し、説明文や論説文といった読解力が向上し、学校の成績も良くなってきました。成績が向上すると、さらに学びのモチベーションが高くなります。
こちらから「勉強しなさい」という強いプレッシャーをかけなくても、宿題は必ずやってくる。このような学習の習慣が一旦身についた子どもは、余裕を持って希望校に合格する確率が非常に高かったそうです。