ーーーー講義録始めーーーー
第3の原則:学習内容の価値
第3の原則は、学習内容に価値を見出し、明確な問題目的意識を持つ場合、強く動機づけられるということです。
学習して身につけた知識は社会生活で役に立つという経験は、すごく重要です。学びのモチベーションはかなり高くなります。
普通の人間にとって学びの価値とは、生活と密着していることで初めてわかります。例えば、スーパーで買い物するとき、割合の知識がちょっとでもあれば役に立ちます。海
外旅行に行った時は、速さや時間や時差の知識が結構役に立ちます。外国の文化のことを知っていたり、その国の言語を知っていると、さらに旅行は楽しくなるのではないでしょうか。
第4〜6の原則:感情のコントロール
第4から第6までの原則は感情にとても関連しています。
第4の原則は、学習活動に対して肯定的な感情を経験する場合、強く動機づけられるということです。学習をして知らないことを知って嬉しかった、人から褒められた、学習する過程で仲間ができたなどの肯定的感情がある人は、強く動機づけられるということなのでしょう。
第5の原則は、反対に、否定的感情を経験する場合、学習から関心が逸らされると言います。学習していて、他の人と比べてできないことで、恥ずかしさや失望などの感情を抱くと、学習が達成されにくくなることが多いというのです。
しかし、第6の原則なのですが、このようなプラスやマイナスの感情に対応し、自分で感情をコントロールできるようになると、自分の持つ力を最大限に発揮できるようになるということなのです。
感情は学習に本当に大きな影響を及ぼすのですね。
感情と学びの深い関係
本当にそうです。感情と学びの深い関係があるということ、これは子どもたちを見ていると本当によくわかります。親子関係や学校の友人関係が良くないと、こちらはすぐわかります。勉強なかなかしてくれないのです。心が安定しないから勉強どころではないのです。学力は当然伸び悩みます。
そのため、中学受験を教えている小学生には、親を含めたメンタルな面でのケアをすごく気をつけました。
感動の機会を与える
もう1つ、感情を安定させる方法があります。それは、子ども自身に新しい発見の感動の機会を与えることです。「わかって面白い」という、そういう感動です。
具体的に1つ例を示しましょう。100円の10パーセントはいくらかという問題で、なぜ10パーセントを0.1にして、100×0.1とするのかということをきちんと説明できるようになると、子どもの目は輝いてくるのです。10パーセントをなぜ0.1にしなければいけないのか。これを説明できる大人は結構少ないのです。
何人かの仲間でアクティブに、「なんで10パーセントは0.1にして計算するんだろう」ということを意見交換をしながら授業する。これはとても全体の学力を向上させるときに役に立ちました。
おそらく、楽しく意見交換をして学ぶということがとてもいいのでしょうね。そういうことを考えますと、感情は本当に大事ですね。
第7の原則:リソースの活用
第7の原則は、リソースを使いこなし、課題にうまく対処する場合、学習に集中して取り組むようになるということです。
学習者は、具体的な目標を設定し、適切な学習方略を選択し、到達すべき成果のために必要な努力と時間を考えるということが必要ということです。
第8の原則:望ましい学習環境
第8の原則は、望ましい学習環境と感じると、学習は強く動機づけられるということです。
自分にとって良いと考える学習活動を自分で選択し、自分で学習を律するよう周囲が励ますべきということなのでしょうか。
このようなことは、受験生が多い子どもたちに受験をすることで身につくことが結構できるのではないかと思います。適切な学習方略の選択は、ICTの時代はさらに重要になってくるのではないでしょうか。
例えば、学習方法が効果的というアドバイスを受験生にしてきました。夜遅くまで勉強するよりも、朝早く起きた方が効率がいいよ。寝る前は暗記学習にしようね。宿題は次の日よりもできるだけ当日にした方がいいよというようなことを伝えました。
このようにして、はっきりした目標を持って、学習方略、具体的な勉強の仕方を教える。そういうことを身につけた子どもは受験をクリアする確率が高い。それだけではなくて、その後も、入った後も勉強し続けるという、そういう報告も受けています。
まとめ
小宮山さんに解説をしていただきながら、学習の動機づけに関わる8つの原則に基づいて考えてまいりました。これらの原則は、私たちの学習が成功するかどうかが環境や学習者の感情に関わるということを明らかにしています。
成人が学習する際の動機づけを改めて考えてみますと、自発的に学習するという点では、やはり自己実現欲求や内発的動機づけが大事になるということなのでしょう。
参考:原則3〜8の簡単な整理表(概念整理)
| 原則 | 講義でのポイント | 主な理論・研究との対応 |
|---|---|---|
| 第3:学習内容の価値 | 学んだことが生活や将来に役立つと感じると動機づけが高まる | Expectancy–Value 理論の「主観的課題価値(有用性・興味)」 |
| 第4:肯定的感情 | 嬉しさ・褒められる経験・仲間とのつながりが学習意欲を高める | コントロール・価値理論におけるポジティブな達成感情 |
| 第5:否定的感情 | 恥ずかしさ・失望などの否定的感情は、関心をそらし学習を妨げやすい | 否定的達成感情は回避・注意分散と結びつきやすいことが示されている |
| 第6:感情コントロール | 感情を自分で調整できると、力を最大限に発揮しやすい | 自己調整学習の一部としての「情動調整」 |
| 第7:リソース活用 | 目標設定・方略選択・努力と時間の配分が集中を促す | Pintrich らの SRL モデル(目標設定と方略使用) |
| 第8:学習環境 | 自分で選び、自律的に学べる環境が動機づけを高める | 自律性支援的な環境と動機づけ・学業の関連、ICT 時代の方略重要性 |
