ーーーー講義録始めーーーー
第9回のテーマは変容的学習です。
この変容的学習の基になっている言葉は、英語のTransformative Learningです。この言葉は「変容的学習」のほか、「意識変容の学習」と訳されることもありますが、今回は「変容的学習」という言葉を用いたいと思います。
さて、私たちは生きている中で様々な人生上の出来事に遭遇します。嬉しいこと、楽しいことも多くありますが、辛いこと、悲しいこと、そして時には耐えがたい苦しみをもたらす出来事にも遭遇します。
変容的学習とは、自分の価値観に混乱をもたらすような人生で遭遇する辛い出来事の経験、そしてその危機的状況を乗り越える際に、それまでのものの見方が変わり、紆余曲折を経ながら、最終的に発達とされる新たな広いものの捉え方が可能になるとし、そのプロセス自体を学習という言葉で捉えるものです。
メジローによる定義
この理論を提唱したアメリカ人のJack Mezirow(ジャック・メジロー)は、変容的学習を次のように定義します。
「将来の行為を方向付けるために、以前の解釈を用いて、自分の経験の意味について、新たな、あるいは修正された解釈を作り出すプロセス」
ゲストの紹介
この変容的学習を今回取り上げるのにあたり、ゲストをお迎えして進めていきましょう。一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみさんです。
桜井さん:こんにちは。桜井なおみです。よろしくお願いいたします。
こちらこそよろしくお願いいたします。早速ですが、桜井さんの所属するCSRプロジェクトはどんな活動をしているところなんですか。
桜井さん:はい、CSRプロジェクトというのは、Cancer Survivors Recruiting(キャンサー・サバイバーズ・リクルーティング)の略になっています。Cはcancer、つまりがんのことです。Sはsurvivorsで、がんの経験者を意味します。Rはrecruitingで、就労や雇用、つまり仕事に就くこと・働き続けることに関わる意味合いになります。こういった患者さんたちの就労、あるいは経済的な問題、こういった社会的な生活の支援活動をしている団体になります。
講師:そうですか。桜井さんがこの活動を始めたきっかけはどのようなことだったんでしょうか。
桜井さん:はい、私自身ががんの経験者です。30代の時に乳がんを罹患いたしました。
図:メジローに基づく「変容的学習」プロセス(代表的な流れ)
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混乱・違和感(ディレンマ)
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自己点検/感情の揺れ
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前提の批判的省察(「当たり前」を問い直す)
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他者との対話(意味づけの検討・合意形成)
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新しい見方に基づく試行(役割・行動の試し)
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新しい視点を土台に生活へ統合(再統合)

