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価値観の前提を見直す―変容的学習の第3段階から第4段階 #放送大学講義録(成人の発達と学習第9回その3)

ーーーー講義録始めーーーー

 

第3段階:批判的アセスメント


講師:第3段階に移りますが、第3段階は、認識的前提、社会文化的前提、あるいは心理的な前提についての批判的な評価(アセスメント)とされています。自己検討を踏まえ、これまでの価値観の前提を内省的かつ批判的に評価する段階とされています。 桜井さんにとっては、それまで当たり前に前提とされていたことを見直すことはありましたか。例えば、人によってお金を稼ぐ、偉くなるといった価値観から、身近な人を大事にするなどの変化があると言われていますが、いかがでしょうか。
桜井さん:そうですね。やはり病気をする前というのは、30代働き盛りというところもありましたので、やはり自分のキャリアをどうするかとか、自分に関することがすごく多かったですし、周りを見るとかっていうことはあまり考えられなかったですね。ただ、病気をしてからは、なんかお金なんて天国に持っていけるものでもなんでもないし。そうですね、キャリアもそうですよね。どんなポジションになったとしても、それはどうでもいいなということを思いました。それよりは、生きている証っていうものを残したいなっていうことをすごく思いました。自分の存在を、何か仕事という形とかお金ではなくて、残したいなっていうことはすごく感じましたね。
講師:そうですか。

 

第4段階:共有できる変容プロセスへの気づき


講師:次に、第4段階は、自分の不満や変容プロセスが誰かと共有できるもので、その人たちも同様の変化を乗り越えたことへの気づきがあると言われる段階です。自分以外の人も同じような境遇で同様の状況に直面し、その状況を受け入れ、乗り越えたことに気づくという状況とのことですが、桜井さんはこの時期、同じような闘病をされた方の書かれた本をたくさん読まれたと伺いましたが。
桜井さん:そうですね。最初はですね、自分は特に特定の宗教を信じていたわけではなかったので、何かその宗教、昔の人がそういうものに拠り所を求めていくには何か理由があるのかなと思ってですね、宗教とか哲学とかですね、なんかこう、悟りを開けば死は怖くなくなるんじゃないかっていうようなことを思って、たくさん読みました。今までの人生の中で一番読んだと思っています。
ただ、読んでも、なぜかちょっとピンとこないというか、入ってこなかったんですね。で、私にはちょっと向いてないのかななんていうことをちょっと思いまして、たまたまなんですけども、同じ病気をした経験者の本をね、少し読んでみたんですね。

 

岸本英夫との出会い


桜井さん:で、その時に、岸本英夫さんという方のですね、『死を見つめる心――ガンとたたかった十年間』というような、こんな本がありまして、岸本さんが、がんと向き合う経験の中で綴られた記録がまとめられているんですけれども、紹介文などでも「生命飢餓状態」というような言葉が示されていたんです。
で、自分はまさに今この状態にあるんだなっていうことを思いました。明日も明後日も続くと思っていた時と、まさに自分に死が訪れる状態では、その命に対して飢えているんだっていう、「飢える」という言葉で表される感覚ですよね。もうそれは本当に共感いたしましたし、同じ、多分年齢的にも近かったのか、千葉敦子さんという乳がんを経験された方なんですね。この方が、そうなんです、書かれた方たちも。あの本を読んだ時も、一番最後の本が、最後に校正ができなかった、申し訳ありませんっていうような言葉が書いてあったですね。こういう言葉、仲間からもらうその言葉っていうのは、非常に私の人生、その後支えてくれたなっていう風に思っています。

 

生命飢餓状態という発見


講師:なんか、先ほど「生きたい」というお言葉がありましたけれども、生命飢餓状態というのは、そういう言葉がこう絞り出される状況なんでしょうね。
桜井さん:そうです。この言葉をやはり文字で見た時には驚きました。こういう感覚で、まさにそこなんだっていうことを、なんか気づかされたっていうのかな。発見でした。本当に。うん。

 

図表(理解補助:第3・第4段階の要点整理)

図:メジロー10段階の第3・第4段階(講義該当部)

 

段階 キーワード 何が起きる段階か この講義での対応箇所
第3段階 認識的・社会文化的・心理的前提の批判的評価 「当たり前」の前提(価値観・成功観・自己像)を問い直す キャリア/地位/お金中心→「生きている証を残したい」
第4段階 共有可能性への気づき 変容の苦しさや過程が「自分だけではない」と分かる 闘病経験者の本を読み「共感」「支え」へ