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新しい役割の発見―変容的学習の第5段階から第7段階 #放送大学講義録(成人の発達と学習第9回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

第5段階:新しい役割、関係、行動の選択肢の模索


講師:そして、次の段階になりますが、手術や入院生活を経られた後のことになるかと思うんですが、第5段階、いわゆる新しい役割、関係、行動の選択肢の模索という段階とされています。新しい関係性を構築する、あるいは新たな行動を起こすために、新しい役割や関係、行動の選択肢を探っていく段階とされます。 桜井さんが新しい役割に気づいたのはこの時期でしょうか。
桜井さん:そうですね。まさに一段落終わって、さあじゃあ次のステップへっていうようなことをちょっと考えた時期に相当するんじゃないかなっていう風に思っています。自分自身の、何かこう、がんになったことでアイデンティティというようなものを一度こうガラガラっとこう崩された感じがしたんですね。それをこれからもう一度再構築しなくちゃいけないんだなっていうことを、この時期すごく思いました。

 

仲間を看取った経験


桜井さん:ただ、その一方で、ちょうどその時期に、ずっと一緒に闘病していた仲間を看取ったんですね。で、病気になって治療を受けて、治療がだんだん難しくなってきて、もう何もすることがなくなって人が死ぬっていうところ。それから、死んだら人というのは冷たくなって、体には死斑というものが出て、そして焼かれて骨になって、それを私が今拾ってるんだっていう、その行為をやはり30代で経験できた。しかも、自分の家族ではなくてですね、身内じゃないところっていうのが大きかったんだなと思っています。
講師:そうでしょうね。

 

繋がりの意味


桜井さん:はい。で、この時に亡くなられた友達がですね、ずっと仕事を手放さなかったんですね。で、私はこの時に一回再構築しようと思って、仕事から何から全て手放してしまっていたんです。で、それじゃないんだっていうことをすごく思って、やはり、今までの延長の中で新しく作っていく、なんか繋がり感っていうものの意味っていうものですかね、それをすごくなんか教えられたなっていう気がしています。
講師:そうですか。

 

第6段階:行動計画の検討


講師:ここまで、変容的学習の10段階の学習プロセスのうち、5段階まで説明してきました。次に、第6段階は、行動計画の検討とのことであり、第5段階で模索し得た方向性について、具体的に行動を起こす計画を立てるということです。桜井さんは、繋がりが第一と再認識されたとおっしゃいましたけれども、どのようなことをこう、その後考えるようになられましたか。

 

システムとして残す


桜井さん:そうですね。自分が生きてきた証を残すというようなことも考えていった時に、システムを残すっていうことはあるのかなと思ったですね。で、当時、NPO法(特定非営利活動促進法)が施行されてから数年が経って、患者会のような団体が法人格を取得していく動きも広がっていた時期だったんですね。
ええ。法人というのも、やはりシステムを残すということで、たとえば解散時の残余財産の帰属(譲渡)先を定款で定めるなど、団体の資産の扱いが制度として定められていますので、こうした仕組みは、活動を次へつないでいく上でも一つの拠り所になると思ったんです。
それに、自分ががんになってからもいろんな人と繋がりができていきました。なので、それをさらに社会の中に戻していくということを考える上でも、非常に役に立つ場なんだなっていうことを見つけまして、患者会っていうような活動でしたり、あるいはそういう場所があれば場所に出向いていったりっていうような、こういうことをやっていきました。
講師:そうですか。要は、社会的にシステムという形でご自身の経験をビルトインするというか、そういう活動だったわけなんですね。

 

第7段階:知識と技能の獲得


講師:次に、第7段階ですが、自分の計画を実行に移すための知識と技能を獲得するということなんですが。行動のための知識と技能を得るために、具体的な学習活動を行ったということ、ありましたでしょうか。
桜井さん:ありましたね。やはり、システムは作ったとしても、その上に入れていくものがないとダメだなと思いましたので、ちょうど治療も一段落したところがありましたので、日本以外のですね、アメリカだったんですけども、アメリカの患者会の人たち、どんなことやってるのかなっていうようなところで、海外のいわゆる患者会活動のトレーニングとかがあるですね。
講師:そうなんですか。
桜井さん:ええ、こんなところに行ってみたりとか。ええ、学会ですね。いわゆる医学系の学会。私、今までそういう場所には行ったことが全くなかったので、そういう学会ですとか勉強会に参加をしたりっていうことをしました。
講師:あー、そうですか。いろんな学習活動に積極的に参加されてきたということですね。
桜井さん:そうですね。

 

図表(理解補助:第5〜第7段階の位置づけ)

 

段階 段階名(要旨) 講義中の対応する語り
第5段階 新しい役割・関係・行動の選択肢の模索 「アイデンティティが崩れた/再構築が必要」
第6段階 行動計画の検討 「システムとして残す」「患者会・法人化も視野」
第7段階 知識と技能の獲得 「海外の患者会活動を学ぶ」「学会・勉強会に参加」